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2014/12/27

タイラー・スペンサー・ヴント

 もう1世紀以上前に発表されたものもあるけれど、『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』(棚瀬襄爾)に引用されている限りにおいて、他界観念に対する西洋人の探究を参照しておく。


タイラーの他界観念(『原始文化』(1871年)

・霊魂輪廻には、再生と転生がある。
・輪廻と来世の中間に身体的復新、復活がある。
・他界は、1.地上、2.西方、3.地下、4.日月、5.天

・地下、地上、天、に要約される。
・継続 来世は現世の反映
・応報 来世は現世の償い(継続の論理から応報の論理への発展。応報は文明の時代において発生)

・生命と幻の観念が結合して、霊魂(soul)の観念が発生。この霊魂が自然物や物に適用されて自然崇拝や霊物崇拝が発生。人間以外の霊魂が精霊(spirit)。精霊の段階から多神教の高い神々の段階。多神教の統一による一神教。

 霊魂が「生命と幻の観念」だというのは、論理的ではあるが、南太平洋の種族の複数霊魂観を見る限りでは、「生命」とは別に「霊魂」観念は生まれているように見える。


スペンサーの他界観念(『社会学原理第1巻』(1906年)

・来世は現世の延長
・生活全体が継承されるから、死者は家財や武器を必要とする。家畜も必要とするから動物供犠が行われる。伴侶や下僕が必要だから、人身供犠が行われる。来世と現世の交通も緊密。
・進化
 1.物質的から陰影的
 2.来世は現世と異なってくる。時に、生業が消える。
 3.社会秩序も変わる。
 4.来世の倫理が発達。敵対や報復の義務の消失。
 5.現世と来世の離反。野蛮人は毎日死者を慰め、死者は毎日生者を助け、また妨げるが、この関係が切断される。

・死者の住居は、死者の住んでいた住居と一致し、死霊は住居の周囲や墓をさまよう。死者の出た家を捨てる習俗も、死霊がその家にいると考えられたため。

 今のぼくの考えでは、死者が出た家を捨てるのにもいくつかの観念があったのだと思える。
 1.「死霊がその家にいる」からというより、死者の関係幻想が家に集約されているからである。死者が死者の住居と一致するのだ。死者の出現は、残された人たちとの関係幻想の再編を強いる。それは、家を捨てることによってしか、できなかった。
 2.死霊観念が生れた段階では、死霊への恐怖も加わる。
 3.死者の死後の生活のための家として

・定住洞穴居住民は、洞穴を死者の住居とみるが、ここから地下の他界の観念が生れる。
・遠方の他界観念は民族移動によるもの。
・二つ、二つ以上の他界観念は民族移動とともに征服が加わったもの。他界も、価値高きものと低きものになる。
・死者の住居が山頂だった場合に、天の他界が生れる。
・復活は、ただちに復活、のちに不確定、ついには万事の終末

 琉球弧に照らすと洞窟から地下の他界を思念するようになるのは、とても自然だと思う。


ヴントの他界観念(『民族心理学原理』(1913年)

・1.来世表象の最初の形態は、死者の霊魂がなお地上に残存して付近にいる。厳密な意味での他界ではないが、どこか決まった場所に霊魂が滞在する。精霊の村。
・2.つぎの形態は地下界
 1)埋葬
 2)死および死を待つものへの恐怖
 3)日没の知覚
 4)形像霊の性質(睡眠や夢の現象)から発生
・3.天。神の面前に住む。やがて、地下界と対置する。
・輪廻はトーテミズムと関係がある(アンカーマンは、再生とトーテミズムの結合が霊魂輪廻信仰を生んだと述べる)。

 「死者の霊魂がなお地上に残存して付近にいる」のを、初期の他界表象として抽出したのは正しいのだと思う。


 棚瀬襄爾が、『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』を出版したのは1966年だから、半世紀ほど前だ。その時点で参照すべきものは、上記だったとみなして先へ進む。

 

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