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2014/12/06

葬地は聖地

 御嶽がかつての葬地だった例。

 宮古島、狩俣のニスマにある大森(フンムイ)から北西にかけての地域を「青山」と呼ぶ。そこには古い墓が点々とあり、また青山の背後の崖下の岩陰にも人骨が納められているという。そしてそこに神女たちの籠る御嶽であるアガイウタキ(東御嶽)、イスツウタキ(西御嶽)がある。狩俣の村落はかつてニスマにあり、その付近の斜面上から低地へと移動してきた。

 集落が低地に移った時、旧集落の森から山にかけて信仰の対象となり、そこのかつての葬地に御嶽が置かれている(比嘉康雄『神々の古層』)。また、アフノヤマ、アフノ森、アフ御嶽、アフサキ森、アフヤマの嶽などと呼ばれる御嶽は各地に散在し、それが風葬所と併存している(湧上元雄「沖縄の古代祭祀と他界観」)。

 こうした形態がさらに象徴的になったものに、二体が埋葬あるいは祀られている例がある。

 トカラ列島平島では夫婦二人の骨を「島立て神」として祀っている(笹森儀助『拾島状況録』)。古宇利島のマーハグチ御嶽には二個の髑髏があって、年に四回の吉日を選んで、全裸の祝女がその髑髏を神酒で洗う式がある(『国頭郡志』)。伊計島の最も大きな拝所であるセーナナの拝所の由来では、天から男女の裸神が降りて島造りに携わった。この二神を、裸世之神、または東世之神としてその遺骨を祀っている。津堅島にも二人の始祖を祀った記録があり、「喜舎場子、真志良代の二人、既に天年を終へ、遂に中の御嶽に葬る。之を禱れば必ず応ず」(『遺老説伝』)。

 これらの例は、兄妹始祖神話を背景においた男女二神を、村落の始祖として御嶽に埋葬したものだ。

 一体ということもあり、この場合は、祝女であることが多い。「巫女はその主神と紙一重の生活をした人である。(中略)その中の最高の婦女は生き乍ら神とされてゐて、亡くなると本道の神になる」(折口信夫)というように、神としての祝女が祀られているものだ。友盛御嶽は、聞得大君の骨を安置している。奄美諸島の御嶽であるイベ、ウブに祀られているのは「若干の英雄を除けば大体が祝女である」(酒井卯作)。

 ぼくたちは共同体の旧集落の葬地、男女二神の二体の葬地、祝女の一体の葬地を、御嶽の構成の段階として想定することができる。二体の段階では、母系化による兄妹始祖神話を元にしており、一体の場合は、母系社会の進展に伴い、女性(姉)が宗教を、男性(弟)が政治を司った段階を想定すればよいと思える。

 これらはいずれも高神として祀られている。そしてこの高神の根拠となっているのが骨なのだ。「骨神(ふにしん)」とはそういう意味だ。地下の他界の思考では、埋葬のあと頭骨のみが取りだされ崇拝される。この思考のなかでは祖先崇拝が生れる場合がある。

 事例1.ベレプ諸島。浅い墓穴に頭を上にして坐位で埋葬する。頭だけ地上に出しておくこともある。後で頭蓋を取るためである。墓掘り人は穢であるとして、厳重に隔離される。死後一年すると、死体の肉が完全に腐り、頭蓋を取り去って住居近くの各家族墓地の地上に並べる。彼らは祖先の功徳を信じ、墓地である聖域は、犯すべからざる財産で、他人の聖域を犯すことはない。病人を治そうとすれば、まず家族の一人が甘藷の葉を携えて聖域に行き、これを頭蓋に供えて成功を祈る。豊作を願う時もヤム芋の取り入れ前に不作の心配のある時にも、頭蓋に祈る。

 事例2.ニューカレドニア島南々東部の島人。死体は埋葬するが首だけを出しておく。10日経つと、首を取り、頭蓋を保存する。病気や災害の時には頭蓋に食物を手向ける。彼らの神々は彼らの祖先であって、その遺品を保存し、偶像崇拝する。死者は白人に化現するという信仰もある(p.233)。

 この南太平洋の例では、頭蓋は家族の中でのみ信仰の対象となっている。しかし、御嶽が生み出された時、家族内の信仰は共同化されたが、その時、葬地が根拠となって高神の観念は発生したと言える。そして高神の根拠となる骨は、男女二神や女性祭司へと移行していったと考えることができる。したがって、高神は、祖霊的なものから島建ての始祖までの幅を含むことになる。

 また、御嶽とは高神が定住あるいは降臨する聖域と言うことができる。


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