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2014/11/24

その他儀礼のなかの仮面

 死者儀礼、成人儀礼、豊穣儀礼の範疇に入らないもの、あるいは、豊穣儀礼の要素を持つかもしれないが、判断がつかないものを挙げる。

 事例1.マンダング族(セピック河流域)

 家屋落成の祭祀、マイ・バンク。氏族ごとに兄弟とその妹の仮面がある。羽毛や貝の装身具で飾りたてた仮面があたらしい家で歌い踊る。仮面の中の男が節のない竹筒を隠しもち、この竹筒の一端を口にくわえて咳払いをまじえながら大声で唸るような、独特の朗唱を発する。拡声器のように竹筒にこもった声が「マイ」の声とされる(p.159、福本繁樹『仮面は生きている』

 事例2.イアトムル族(セピック川中流域)

 子供が駄々をこねて親の言うことを聞かないと、両親が相談して、(成人儀礼に登場する)アバンに頼んで、子供を脅す。(福本繁樹『仮面は生きている』

 事例3.トーライ族

 トゥブアン、ドゥクドゥクは、農耕神だと思えるが、祭儀の過程は、制裁の機能を持つ。

 事例4.パプア湾

 ヘヴェヘ。祭りに加わる仮面は百にも達することがあり、それぞれ神話の中の人物を現わす。(福本繁樹『メラネシアの美術』

 エレマ族。起源神話に登場する超越的な存在者といてのアバ・ヘヴェヘがエラボ(男の家、男性の集会者)で誕生し、死ぬまでのプロセスを描くもので、成長の各段階の儀礼の連続によって構成されている。そのサイクルは二十年にも及ぶ長大な儀礼でもある。具体的には、仮面(衣装)として表象されるアバ・ヘヴェヘを作成するために、その材料を神話の再現を通じて、死者の霊や精霊との儀礼的交感で収集する段階に始まり、仮面が完成して後に村落を踊り歩く祝祭的儀礼の段階(この段階で、共同体では日常的な作業が停止される)を経て、アバ・ヘヴェヘへの象徴的殺害と死者の国についての創造神話の再演からなる葬送儀礼的な内容の段階で終えられる(「南洋の奇妙な自体」磯忠幸)。

 事例5.タミ族

 10年から12年に一度、タゴの儀式が行われる。儀式は一年間続けられ、その間さまざまな禁忌が布告される。また、タゴの儀式の期間は、平和を保つ義務のある時である。すべての争いや戦闘は、儀式が終わるまで禁止される。この儀式の期間にタゴが島にやってくる。一連の長い儀式のなかでも、最初のタゴを迎えるときと、最後にタゴを贈りだすときが重要なものである。ホラガイを吹き鳴らす音に、それぞれの親族のタゴが異なった場所から現れる。岩の割れ目から這い出してくるものもあり、海を泳いで渡ってくるものもある。それぞれのタゴに属する親族の代表人物が責任をもってタゴをもてなす。宿泊の用意をしたり、供物を捧げたり、舞踏を行ったりする。タゴはタミ島が生れた時に同時に生まれた精霊であると考えられている。(福本繁樹『メラネシアの美術』)。

 
 マンダング族において、兄弟と妹の仮面があることは、男女一対の仮面の前の段階にあるものかもしれない。また、タミ族のタゴの儀式は、祖先崇拝に当るものだと思われる。開かれる頻度はイザイホー並みだ。

 これらの例から分かるのは、仮面仮装の儀礼は、決して農耕儀礼のなかで生まれたものではないということだ。


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