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2014/11/30

マリンド・アニム族の他界と葬法

 ニューギニアのマリンド・アニム族では、成人儀礼の際に仮面が出現する。マヨ最後では、少女を穀物母神として集団で性交したうえ殺害し、穀物としての再生を祈願する(cf.「ハイヌウェレ神話とマヨ祭儀」)。彼らはなにかと行動が直接的で象徴化を得手としていない。そこで、他界や葬法にも象徴化を経ていない生の形が露出するのではないだろうか。

 他界観念ははっきりしていないが、フライ河の彼岸またはディグル地方、最近では、アンボン、マカッサル、スラバヤと、地上の他界観念を持っている。これは埋葬思考と樹上葬・台上葬が混融したことを示している。アンボン、マカッサル、スラバヤは、憧憬の地が他界となりうる例を示すものだった。「あの世は、一般に、この世よりはより美しく、よい所とせられている」のは、埋葬思考によるものだ。

 霊魂には、gova と hais があり、gova は明るい光、白い姿を持ち、hais は人形の骸骨である。hais は滞在地なく、夜は幽霊として、昼は鳥や鴉の姿を取る。マヨの祭儀に見られるように、人間が植物に転生するという観念を持っているが、同時に、鳥や鴉という動物への転生も持っていることになる。hais が夜に戻ってくるのは、「人形の骸骨」を指すとしているが、夜に戻ってくるところは死霊の動きと似ており、「肉の霊」を示しているように見える。

 病気の原因は、負傷、風邪などの自然なものは少なく、呪術か悪霊(dema)が原因であるとされる。呪術は「身体の霊」の思考であり、悪霊は、「肉と骨の霊」の思考法だ。呪術は反対呪術によって、悪霊は焼竹の儀礼によって取り除く。

 死体は、全身を黒く塗り、目だけは黄または赤に塗り、特定の装いをさせる。喪者は全身を白く塗り、老人は悲痛で単調な挽歌を歌う。死者にはバナナ、甘藷、ココ果、アレカ酒などを手向けるが、葬儀が済むとみんなで食べる。近くのココ椰子を倒し、サゴの木を切り倒す。これによって、死霊 hais が川を渡れるようになる。

 夕方、死体を、死者がふだん座っていたところや寝たところ、炉辺を選んで日没直前に埋葬する。貴重品は取り去るが、武器などの道具は墓上にさらして死者に手向ける。

 若干日が経つと、再び発掘する。呪術師は、死体の死汁を除く。また、死の呪術によって死んだ場合は、呪術をかけた者を特定するため、数夜、死体の近くに寝て犯人を夢みる。この呪術師-死汁-犯人の特定は、「肉の霊」の思考の系列に属している。

 1年後、骨を掘り出し、岱赭(たいしゃ)で赤く塗る。頭蓋も洗って赤く塗る。そして再び墓に納める。hais は、死体または骨に結合していると考えられるが、その表象は明白ではない。この辺りも、hais が「肉の霊」ではないかと考えられるところだ。

 ところで、マリンド・アニム族では死者崇拝は行われるが、頭蓋崇拝や骨崇拝は行われない。死者の骨は尊敬もされないし、お守りともされない。しかし、首狩りで取った首は、子供の命名に仲媒の役をする。これは棚瀬の研究の成果によれば、地上の他界によって個別の頭蓋崇拝ができなくなった部族が、首狩りとして共同儀礼化したものだから、頭蓋崇拝がないことと首狩りの実行は、関連している。

 マリンド・アニム族は死者の霊について知らないが、死霊を恐れ、夜は灯なくして外出せず、村から遠くは離れない。秘密結社の団員の死去の際には、仮面が出現する。(cf.『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』

 首狩りによる共同儀礼が行われ、頭蓋崇拝は行われない。また、死霊を恐れるほか、死霊は鳥に転生する。死者儀礼や成人儀礼のなかで仮面が登場する。総じて、「肉の霊」への関心が強く、来訪神の思考を進展させているが、高神的なものは潜在化しているように見える。


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