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2014/11/03

『革命のつくり方』

 台湾の「太陽花運動」を革命という言葉で捉えるのは、それが革命のつくり方を示し、実行し、成功したからだと、著者の港千尋は書いている。

 国会が学生によって占拠されたのは中華民国史上初めてのことである。もちろん現代史において、かくも長期にわたり国会を若者が占拠した事例は稀である。わたしはこの驚くべき事態を目の当たりにして、そこに革命の可能性を感じた。  革命の革命的なつくり方を見たように感じたのである。

 この運動は、「言葉の本来の意味では、革命ではない」。けれど、そのつくり方を示し、実行した。では、なぜ「成功」と言えるのか。それは「非暴力」だ。「しかし犠牲者をひとりも出すことなく、学生が国会を三週間以上にわたって占拠したという例はおそらく歴史的にも稀だろう」。そこには「感覚と情動」の共有があった。

 「太陽花運動」を社会運動の系譜で捉えた時、港が抽出しているのは、ブラジルの例だ。1982年、ブラジル労働者党が政党として登録される。そこには、芸術家や批評家が参加していた。その年の得票率は3.5%にすぎなかったが、2011年の大統領選挙ではブラジル労働者党のルーラが選出され、「世界を驚かせることになる」。

 二〇一一年のウォールストリート占拠から二〇一四年に至る流れのなかで、二〇世紀を通じて北半球中心だった社会運動が、名実ともに地球全体をカバーするきっかけをブラジルがつくったことになる。

 これらの舞台になっているのは都市だ。「人間にとって、都市は生活の糧を売るためだけの手段ではない。都市とは、人間の創造的生活にとって無限とも言ってよい価値をもつのであって、不動産価値などで計れるものではない」。先駆的な例は、ブラジル憲法に加えられた「都市への権利」。

 都市にとってその使用価値は交換価値に優先する。

 これは印象的なフレーズだ。マルクスは水や空気は、使用価値のみがあって交換価値は持たないものとみなした。自然の懐はまだ豊かだったということもできる。ところが現在は、水や空気も交換価値化されている。その人工化された環境のなかで、「都市への権利」は、かつての「水や空気」のように、使用価値を浮上させる兆候にみえる。あるいは、古代のように、大地を身体化されたものとして捉えようとする感覚だ。

 この本は、黒箱、議会、ひまわり、身体性、配置図、診療部、翻訳部、非常通路、教室、交通機関、具体性、結び目、サプライ、都市の模型、歌、中継、意見、写真、版画、絡まり、報民という各節のなかで、「太陽花運動」の知恵、アイデア、創造性がちりばめられている。ぼくが最も印象的だったのは、「非常通路」のことだ。立法府から次のブロックへの通じる道路に備えられた幅一メートルほどの空間。これは非常用に空けられた通路で、ここから体調を悪くした参加者を担ぎ出するようにするとともに、逆に車椅子でも参加できるようにしたものだ。

 平等はゴールではなく、出発点。だから、「弱い者に対する配慮であると同時に、弱い者でも参加できるよう、万全の体制をとろうとしている努力」。運動の目的は「弱者の救済ではなく、邪草への配慮を経験することによって社会をつくり変えてゆくことにあるように思われた」。「非暴力」は、「現場における、他者を気づかう無数のアクションから生まれたのではなかったか」と、港は書いている。 

『革命のつくり方』


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