« 「地下の他界に伴う霊魂観念」 | トップページ | ヤビム族の葬法と他界観念 »

2014/10/15

タミ族の葬法と他界観念

 棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』から。

 タミ族(ニューギニア)。

 ◇葬法
 死体を家の下、または付近の浅い墓穴に埋葬する。死体から出てくる蛆が出なくなると、短い霊魂があの世に行ったと考える。供物は死者があの世に持っていくのであるとともにあの世の人も喜ばせる。

 死霊は自分を殺した魔術師を恨むが、生者は魔術師と仲良くしないと生活できないので、魔術師に対して大声で怒っていることを語って、死霊を慰める。

 死者に対する哀哭(あいこく)と服喪は全村が参加する。女は死の舞踏を踊り、男は埋葬の手伝いをする。死者があると、親族の死霊も村に集まると考えるから、喪者を一人死霊に晒しておくことはなく、特に夜は全村が墓の上に立てた小屋の周囲に集まって、飲食しながら宿営する。8日間くらい続く。

 服喪期間は2、3年に及ぶ。喪明けには死者のために夜通し、踊りをなす。豚とタロ芋汁を多量に用意し、村人をもてなす。食料次第で、8~10日間、続けられる。

 最後に慕情の小屋を倒して燃やす。死者の肉が腐り去ると、死者の骨を掘り出し、岱赭(たいしゃ)で赤く塗り、これを束にして、二、三年家の中に保存してから埋葬する。最後に埋葬すると、墓には厳重に木の垣を結び、植える。しかし、年が経って記憶が薄れると、墓には構わなくなる(p.324)。

 考えてみれば、死体から蛆が出るのだから、蛆を転生の姿と考えるのは自然なことだ。蛆が出終わるのを確認しているのだから、埋葬までは時間がある。その期間は殯だったのかもしれない。墓の上の小屋を、ぼくたちは家を死者のためにした名残りだと考えている。また、死者の骨を岱赭(たいしゃ)で赤く塗るのは、もとは血で行っていたものであり、死者の再生への信仰が伏流していると見なしている。

 ◇他界観念
 人間は短い霊魂と長い霊魂を持っている。長い霊魂は影と同一視され、睡眠中、身体を離れ、覚める時に帰ってくる。それがある場所は胃。人が死ぬと、長い霊魂は死体を離れ、遠方の友人に死を知らせる。その後、ニューブリテン島西岸のマリゲプを経て北岸の村に行く。

 短い霊魂は、死後のみ身体を離れ、しばらく死体の付近をさまよってから、ランボアムという地下界に行く。ランボアムは現世より美しくより完全だが、現世と酷似している。ランボアムで死んだ霊魂は、蟻や蛆になる。森の精霊になって、人間に悪戯するという先住民もいる。時に蛇になって、夕方や夜、屋根裏などに現れる。

 発作を伴う病気は、近親の死霊が病人の長い霊魂を取っていったために起こると考え、トリトン貝に息を吹きかけて呼ぶ。病気は魔術によるという観念もある。

 仮面舞踏をする秘密結社に関連する神もいるが、重要な意義は認めていない。タミ族が関心を示すのは、死者の霊魂であり、祖先崇拝をする。祖先はそんなに古くに遡らず、記憶の範囲に過ぎない(p.289)。

 ここは重要な点で、始祖、祖先、転生信仰との関連が語られているようにみえる。仮面儀礼の神を重視しないというのは、人が植物、動物と等しいし、どの存在にもなるという精霊の世界から遠ざかっていることを示している。もう、祖先とのつながりでしか想起されていない。しかし、転生信仰もあるので、人間のみの系列を重視するまでにも至っていない。そこで、記憶の範囲のみが重視されるのだ。

 この流れでいえば、琉球弧ソバージュは始祖重視、再生信仰、祖先崇拝という段階を持ったかもしれない。


 

|

« 「地下の他界に伴う霊魂観念」 | トップページ | ヤビム族の葬法と他界観念 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87956/59925021

この記事へのトラックバック一覧です: タミ族の葬法と他界観念:

« 「地下の他界に伴う霊魂観念」 | トップページ | ヤビム族の葬法と他界観念 »