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2014/10/12

葬法におけるメラネシア、ニューギニアとの類似点

 棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』から、改めて琉球弧の葬法と似ているものを取りだしてみる。


 1.マヌス族(アドミラルティ諸島)。死体が完全に腐敗して骨だけになるまで埋葬しないで、家のなかにとどめておく。骨だけになると、海水で洗って解体し、分配する(p.200)。

 2.スルカ族(ニューブリテン島)。死の翌日に埋葬する。家の中に墓穴を掘り、死体を坐位にして埋める。死体の上部を地上に出す。親族は男女別々に若干期間、死体の傍で寝る。のち、しばらくして死者の霊魂を追い払う。死体の肉が完全に腐ると、骨を墓から取りだす。その後、葬宴を催す(p.205)。

 3.ニューブリテン島。死の第一夜は、二人の者が死者の両側に一人ずつ寝る。これは彼らの霊魂が、あの世へ供をするためであるという。死体は埋葬される(p.206)。

 4.ソロモン諸島。死んだ親族や知友の頭蓋を各村の霊所に保存し、そこへ他所者が入るのを非常に嫌がる。墓は港近くの岬にあって、木や草で覆われている。この岬の上にたくさんの小廟があって頭蓋が納められている(p.216)。

 5.トレス諸島。今では埋葬が一般的だが、往時には家の近くに台をつくってその上に死体を横たえ、腐敗せしめた。10日目に頭蓋を身体から話した(p.226)。

 6.ロイヤルティ諸島のリフ。死体は埋葬する。土産筵で包んで、接近しがたい険しい岩穴に納めるのみのこともある。珊瑚礁はどこでもきわめて浅いから墓穴を掘ることができるのは砂浜のみである(p.231)。

 7.ベレプ諸島(ニューカレドニア島の北)。浅い墓穴に頭を上にして坐位で埋葬する。頭だけ地上に出しておくこともある。後で頭蓋を取るためである。墓掘り人は穢であるとして、厳重に隔離される。死後一年すると、死体の肉が完全に腐り、頭蓋を取り去って住居近くの各家族墓地の地上に並べる。祖先崇拝(p.232)。

 8.ニューカレドニア島南々東部の島人。死体は埋葬するが首だけを出しておく。10日経つと、首を取り、頭蓋を保存する。病気や災害の時には頭蓋に食物を手向ける。彼らの神々は彼らの祖先であって、その遺品を保存し、偶像崇拝する。死者は白人に化現するという信仰もある(p.233)。

 9.トレス海峡西部諸島。死体は台上に安置し、筵ぶきの屋根をつくる。数日すると、死者の霊魂を追う。死者の頭を切断し、赤く着色して飾り籠に入れる(p.312)。

 10.トロブリアンド島人(ニューギニア東方海上)。死の翌朝、埋葬する。墓の上に小屋をつくり、近親者は三晩、そこで寝る。死者の兄弟たちは、死後、死者の家を破壊するふりをなし、親族が制止する。埋葬後、しばらくして死体を発掘して頭蓋を石灰入れとして死者の子供が使用する(p.316)。

 11.マーシャルベネット島人。埋葬する。あとで掘り出す。女の骨は夫、母、兄弟、姉妹、姉妹の子供が発掘し、全員が洗骨する。頭蓋は寡婦の家に保存される(p.316)。

 12.ダントルカストー北部のメラネシア人。夫が死ぬと、寡婦が遺骸とともに寝る。死体は埋葬する(p.317)。

 13.ツベツベ島。埋葬に関係した親族は、五、六日間、親族に食事を供せられて、日夜墓にとどまる。肉が腐ると、葬宴を行い、墓から頭蓋を取りだして、家のなかに置く(p.318)。

 14.タミ族(ニューギニア)。死体を家の下、または付近の浅い墓穴に埋葬する。全村が墓の上に立てた小屋の周囲に集まって、飲食しながら宿営する。最後に慕情の小屋を倒して燃やす。死者の肉が腐り去ると、死者の骨を掘り出し、岱赭(たいしゃ)で赤く塗り、これを束にして、二、三年家の中に保存してから埋葬する。最後に埋葬すると、墓には厳重に木の垣を結び、植える。しかし、年が経って記憶が薄れると、墓には構わなくなる(p.324)。

 15.ヤビム族(ニューギニア)。死者は家の近くの浅い墓穴に埋葬される。死者が家長または妻であるときは、家が立派でも棄てる。墓上には仮小屋をつくり、死者の家族は6週間ないしはそれ以上そこに住む。愛児や重要人物の場合は、埋めずに包んで腐るまで家のなかに置き、頭蓋等に油を塗り赤く染めて若干期間、保存することもある(p.326)。

 16.カイ族(フィンシュハーフェン奥地森林地帯)。死後、2~3日目に埋葬する。墓は家の下に掘る。残された妻、夫は数日間、墓の上の小屋に日夜、暮さなければならない。誰かの死んだ家は捨てる(p.328)。

 17.パプア族(クロムエル山麓のケーニヒウィルヘルム岬付近)。家のなかに掘った浅い墓穴に埋葬する。残された妻、夫は1週間くらい墓に留まり、番をする(p.330)。

 18.ツムレオ族(ベルリンハーフェン)。死体を木棺に納め、ややあって家の中またはそばに埋葬する。墓を家の外につくるときには、墓上に小屋をつくり、死者の妻や妹などの女の親族は、数週間から三ヶ月位のあいだ、喪屋に別居する。寡婦は喪の印として石灰を身体に塗り、時々悲痛な挽歌を歌う(P.332)。

 19.マリンド・アニム族(南部ニューギニア)。死者の家のなかでふだん坐っていたところ、寝ていたところ、炉辺を選び、日没直前に埋葬する。1年後、骨を掘り出し、岱赭(たいしゃ)で赤く塗る。頭蓋も洗って赤く塗る。死者崇拝は行われるが、頭蓋(骨)崇拝は行われない。死霊を恐れる。イモの秘密結社では、団員の死去に際して、デマが登場して、神話や死去に際してのデマの役割、あの世への旅を表現する(p.339)。


 似ていると感じさせるには、メラネシア、ニューギニアで、とりわけニューギニアにおいて濃厚になるように見える。まず、どちらにおいても、埋葬後、骨を取りだす葬法が見られる。頭蓋骨の重視も共通している。

 添寝は、ニューブリテン島とダントルカストー北部のメラネシア人、スルカ族にある。琉球弧の添い寝に、ぼくたちは霊魂の転位の仕草を見たが、ニューブリテン島では、あの世への霊魂の供のためであるとされている。

 家に埋葬する他に、家の近くに埋葬し、その上に小屋を立てる例が、トロブリアンド島、タミ族、ヤビム族、ツムレオ族に見られる。また、小屋を立てないが、そこに近親者が滞在するのがツベツベ島だ。琉球弧の例を見てきた目には、これは、もともと死者を家に埋葬していたのを、外に埋葬するようになって、墓の上に小屋を立てたものとして見ることができる。民俗学者たちの見聞にははっきり出てこないが、殯をする例もあるのではないか。トロブリアンド島では、死者の家を壊す真似と制止が儀礼的に加わっているが、これはもともと壊していたことを示すのだと思う。

 ロイヤルティ諸島のリフの例は、珊瑚礁環境における葬法として、「接近しがたい険しい岩穴に納めるのみ」という点が近しい。ペレプ諸島は、墓掘り人の穢れ。同じくペレプ諸島とニューカレドニア島南々東部の島人では祖先崇拝。トレス海峡西部諸島、タミ族、ヤビム族、マリンド・アニム族とは頭蓋を赤く塗ることだ。

 単純な共通点の数では、タミ族、ヤビム族、スルカ族、ベレプ諸島、トロブリアンド島がより近しい。おまけに、タミ族とスルカ族のいるニューブリテン島は仮面仮装の儀礼の分布しているところでもある。

 ぼくたちは琉球弧ソバージュの野ざらしの骨の由来が、家を捨てる段階を持ったこととは別に、埋められない埋葬の系譜もあるのではないかと考える。すると、殯の期間、死体の白骨化を待つのは、琉球弧ソバージュの特異な点ではないかという考えに導かれるが、大和の殯も同様の期間を持っていた。だから、この考えは違うことになる。

 するとむしろ、アドミラルティ諸島のマヌス族のように、「死体が完全に腐敗して骨だけになるまで埋葬しないで、家のなかにとどめておく。骨だけになると、海水で洗って解体し、分配する」方が、この点では近しい。

  

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