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2014/09/18

穀母の殺害と男子結社

 大気都姫が須佐男に殺害された後、大気都姫から穀物が生成される『古事記』の記述について。

 この説話では、共同幻想の表象である女性が<死ぬ>ことが、農耕社会の共同利害の表象である穀物の生成と結びつけられている。共同幻想の表象に転化した女〈性〉が、〈死ぬ〉という行為によって、変身して穀物になることが暗示されている。女性に表象される共同幻想の〈死〉と〈復活〉とが穀物の生成に関係づけられる。(p.143『共同幻想論』
かれらの共同幻想にとっては、一対の男女の〈性〉的な行為が〈子〉を生む結果をもたらすのが重要なのではない。女〈性〉だけが〈子〉を分娩するということが重要なのだ。だからこそ女〈性〉はかれらの共同幻想の象徴に変容し、女〈性〉の〈生む〉行為が、農耕社会の共同利害の象徴である穀物の生成と同一視されるのである。
 『古事記』の説話のなかで殺害される「大気都姫」も、「箒の祭」(穀母の正装をつけて女性が殺害される古代メキシコのトウモロコシ儀礼-引用者注)の行事で殺害される穀母もけっして対幻想の性的な象徴ではなく、共同幻想の表象である。これらの女性は共同幻想として対幻想に固有な〈性〉的な象徴を演じる矛盾をおかさなければならない。これはいわば、絶対的な矛盾だから、じぶんが殺害されることでしか演じられない役割である。じぶんが殺害されることで共同幻想の地上的な表象である穀物として再生するのである。

 農耕社会の発生期において、対幻想のなかに時間の生成するながれを意識したとき、その対幻想は「なによりも子を産む女性に所属した〈時間〉に根源を支えられていると知ったのである(p.194)」。「この時期には自然時間の観念を媒介にして、部族の共同幻想と〈対〉幻想とは同一視された」。ただ、農耕社会の発生期に母系的あるいは母系的な制度がつくられたかどうかとはかかわりない。

 それではこの時、女性を殺害するのは誰か。生む行為からは疎外された男性である。穀母として殺害される女性の神話に、男性を登場させているのは、マリンド・アニム族のマヨ祭儀では、穀母とされた女性が、殺害されるというだけではなく、強姦されたうえで殺害され、共食される。


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