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2014/09/15

新城島の来訪神儀礼

 「来訪神儀礼の成立をめぐる考察-沖縄・新城島の場合-」(植松明石『民俗文化研究』2000年)。

 18世紀の「八重山諸記帳」には、「猛貌の御神」は、「草木に葉をまとい頭に稲穂を頂き出現」と書かれているが、既に「島中奇妙」と題されて、不可思議に見えていたのが分かる。植松は、アカマタ・クロマタのマタ=ムタを「仮面」の意味で捉えている。この儀礼は、「人々の血がさわぐ、忘れられない待ち望む祭」。

 アカマタ・クロマタは別名ニールピトゥだが、この言葉は新城島では「口にすることも禁じられている」。ありがたい神であると同時に、「その怒りにふれれば死に至るとも信じられてきた」。

 6月の豊年祭。1日目は願解き。神迎えは、ツカサ、男性神役、村役、ヤマシンカらが行う。この夜、神役、ヤマシンカらがミラヤアに集まる。女性、未成年者、他所者は外出禁止。2日目、明け方に「アカマタ・クロマタ親子四神がニイレイスクという深い深い土の底からスデルとされる」。新しいヤマシンカ加入儀礼がある。

 粟のつくりはじめ(9、10月)から9ヶ月間。農耕生活、物忌期間。粟の収穫(5、6月)から年の始まりの「節」までの3ヶ月は、アソビ、解放。海が荒れ、悪い風が吹く2月は物忌みが厳しくなる。「時に音は風をよぶといわれ、太鼓、蛇皮線、口笛、高笑い、大声などすべて禁止であった」。

 フカサウズ(精進)。畑仕事は禁止され、聖杜で祈願してから、浜辺に行き一日中謹慎。浜辺で係りの者が全員に「サウズしよう」というと、みな一斉に砂浜に寝る。一定時間経って、係りの者が鶏の鳴き声をするのを合図にサウズが終了。

 美御嶽とミラヤア。美御嶽のイビは女性神役のみ出入り、男性立ち入りは禁止。ミラヤアは豊年祭の時のみ用いられ、ヤマシンカのみが出入りする女性禁止の場所。ミラヤア内の奥、イビ近く、神(ニイルピトゥ)の海からの上陸地点とされる。海岸地点からは離れている。この神迎えは、ヤマシンカが行う。神迎えの後、仮面は新しく塗られる。

 ヤマシンカの加入儀礼の最後の段階は、ミラヤアで行われる。「豊年祭2日目の最後のミラヤアでの審査は、少年らにとって強烈な経験となる」。「死んで生まれかわる成人儀礼に比するもの」。

 アカマタ・クロマタの「親子四神は足を左右に踏み出し、体をゆすり、地面を何度も強く踏み、両手に持つ棒を打ち合わせる。ブセイや旗持ち(パテーツク)や、多くのヤマシンカ達は何れも激しく地面を突き、踏む動作を繰り返す。」

 儀礼の進行には歌謡がともなう。歌謡なくしてこの来訪神儀礼は成立しない。「うたいかわすことの身体の共存感は実に力強い」。

 別れは集落の十字路。一番鶏の告げる明けの寅の刻の鳴き声に合わせ、最後の音とともに忽然とミラヤアに姿を消す。

 「新城の人は豊年祭のために生きている」。


メモ

 ニイルピトゥは海の彼方からやってきて上陸。しかし、土の底のニイレイスクから生まれる、というニライ・カナイ認識の二重性が見られる。新城島の場合、アカマタ・クロマタの出現は、ミラヤアからであり、ナビンドゥ(洞穴)ではない。


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