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2014/08/22

狩猟採集の思考

 ある部族の長老。

 「土地を耕したり、建物を建てたり、動物を飼ったりする連中は、この土地の精霊とは縁もゆかりもないんじゃから、ここから出ていかにゃならんのじゃ。この土地の掟に背いているんじゃからな(p.49)」。
 石や小枝を思わず蹴り飛ばしてしまったアボリジニの子どもは、年長者に、「もとの場所に返せ!」とたしなめられる(後略)。アボリジニにとって、風景とは、人類の心模様と世界を創造した先祖の力を完璧に表現した象徴にほかならない。どんなかたちであれ、大地の秩序を乱す行為はまさに、人類と実在に備わった意味と歴史をかき乱す行為なのである(p.69)。
 アボリジニは、野生の草木の種子を集め、穀物加工のための複雑な方法をも身に付けていた。穀物ともみがらを選り分けたり、種子をすり潰したりといった四万年以上も前から行われてきた方法をである。こうした穀物採集者が、穀物栽培に手を染めなかった理由はどう見ても、故意の選択によるとしか思えないのだ。この選択は、先祖が定めた生命計画の中に記されていた。アボリジニの文化ではまた、衣服を身に付けることも禁じられていた。高度な機械技術とふんだんな皮を持ち合せていたにもかかわらず、建築にはいっさい興味を示さなかったし、あれだけすぐれた芸術や記号を生みだしておきながらも、文字を作ろうとは決してしなかった。実際、アボリジニの抽象化および象徴化能力は、実に洗練された見事なものだ(p.92『アボリジニの世界―ドリームタイムと始まりの日の声』)。

 土地の栽培、所有、建物、飼育、衣服。これは知らないのではなく、拒否されている。トロブリアンド諸島の島人たちが、性交による子の誕生という認識を受け容れないのと少し、似ている。

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