埋葬と死穢
棚瀬襄爾は、『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』において、重要な結論を導き出している。それは、台上葬や樹上葬においては死穢の観念が見られないこと。死穢の観念があるのは、埋葬においてであり、ことに坐埋葬において強いということだ。埋葬と死穢がつながるのはどこかで聞いたこともあるような気もするが、改めて提示されると驚いてしまった。
埋葬は環南太平洋全域に分布している。しかし、オーストラリア、ニューギニア、メラネシア、マレーシアにおいては台上葬、および死穢の欠如が確認できる。一方、ポリネシアでは埋葬と死穢の観念が広がっている。
環南太平洋を琉球弧の母胎のひとつとして見なすと、琉球弧において死穢の観念が強いのは自然であることが分かる。洞窟葬では、死穢の観念があるとすると、洞窟葬は、台上葬、樹上葬とは異なる系列にあることになる。
発生から言えば、死穢の観念を生んで、人類は埋葬をし始めたのではないだろうか。それには定着ということが、鍵になっていると考えられる。
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