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2014/07/25

家を焼く

 村上春樹の「納屋を焼く」は、人殺しを含意した作品だけれど、「家を焼く」は文字通り、人が死んだ時にその家を焼くということ。

 主婦は家の柱だから、主婦の死には葬式のあとでその家を焼くという。炉をしょわせるともいう。戸主である男性の死にも家を焼くという例もあるが、後の変化のように思われた(p.160『女の民俗誌―そのけがれと神秘』)。

 「家は女のものだからもたせてやる」、「女は家を建てたれないから焼いてもたせてやる」(p.166)。

 これはアイヌの例だ。

 マライ半島のサカイ族は男の死体と共にタバコ袋、玉の首飾り、錫のは子を葬り、女の死体と共に、櫛、頸飾り、腕輪を葬る。死者のあった家は焼きすて、たとえ収穫を捨てても住居を移す、サカイ族は死霊を著しく恐れ、家を焼き、ときには村までも焼き、再び帰って来ない。(p.537『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』

 これはマレーシアのセノイ(サカイ)族。山岳地帯に住み、焼畑農耕をし、オーストロアジア語族に属する。

 酒井卯作が『琉球列島における死霊祭祀の構造』のなかで、琉球弧にその痕跡を丹念に追った遷居葬の実例を見出せるわけだ。もちろん、定住農耕民の習俗ではない。

 「死霊を著しく恐れ、家を焼き、ときには村までも焼き、再び帰って来ない」というのは、共同幻想から対幻想が放逐されることを意味していると思える。

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