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2014/07/01

なぜ、兄妹なのか

 兄妹始祖神話は、兄と妹がはじめ性交を知らなかったが、海馬の交尾を真似て、風を仲立ちにして子を孕むという展開を持つ。

 なぜ、兄妹なのか。それは、母系社会においては、母子関係がもっとも重要な意味を持ち、かつ、子の後見者や保護者としては、母の兄弟が大きく登場してくるからだ。つまり、母である姉か妹と、その兄弟が父母の役割を担うことになる。これが、「兄妹」であることの意味だ。

 なぜ、実の父は後退するのか。それは子を孕み、出産することに、父は何の関係もないと見なされるからだ。性交が子供を生むことについての認識が無かったのである。

 「はじめ性交を知らなかったが、海馬の交尾を真似て、風を仲立ちにして子を孕む」という展開には多義的な意味が込められている。人類は性交を知らなかった時期を持たないのだから、「はじめ性交を知らなかった」というのは別のことを言おうとしている。それは、性交を知らなかったのではなく、性交の結果、子が生まれることを知らなかったということだ。もうひとつは、兄妹婚が既に禁忌にされていることを暗に言おうとしている。そして重要なのは、神話の性行為は実際の性行為ではなく、幻想的な、観念上の行為だということである。

 「海馬の交尾を真似て、風を仲立ちにして」というのは、自然や植物と人間を同一視しているとともに、虚構の物語を生むことで動物生を否定するモチーフも内在させている。

 また、兄妹始祖神話は、母系社会の進展ののち生み出された後に生まれている。既に性交と子の出産の関係の認識を持っているからである。そして対幻想を共同幻想に同致させることに神話の本質を持っている。対幻想を共同幻想に同致させるとは、言ってみれば、「われわれは家族である」という観念に共同体の信憑を置いたのだ。

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