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2014/07/29

霊魂の段階

 棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』を手がかりに、霊魂の像化の段階を考えてみる。

1.身体と霊魂の像の二重化が起きる。身体とは分離しない。霊魂の像はしばしば「影」と呼ばれる。
2.霊魂の像が、形態を持ち始める。「夢」で交信する。ここで、霊魂は遊離するという観念が生まれる。
3.霊魂の人間化が進み、身体からの霊魂の去就が生死と結びつけられる。他界が発生する。

 こうなった段階での例。

1.睡眠中、身体を離れた生者の霊魂は、他の人の霊魂や死者と交通する(ナランガ族)。
2.人間の霊魂をyamboと呼ぶ。yamboは「影」の意味も持つ(p.47)。霊魂は睡眠中、身体を離れて死者や遠方の友人を見るのが遊離の証拠。死霊と死者は区別される(クルナイ族、オーストラリア)。
3.霊魂は生存中も身体を離れうるが、死後には友人の睡眠中に現れる(ヴォトジョバルク族)。
4.生者の霊魂は睡眠中、他出するが、その時、当人は鼾をかく。睡眠者から霊魂を誘いだす黒呪術がある。人が死ねば、霊魂は死霊になる(ウルンジェリ族)。
5.夢で死霊と交通しうる。死霊は生前のごとき生活をし、必ずしも墓に留まらず、時々、出てくる(ユイン・クリ族)。

6.死霊は大木を住所とする(ウィラジュリ族)。
7.死霊は墓から出て死せる親族の死霊に会い、聖山の頂から煙とともに、神?の許なる天に上る(ユーアライ族)。
8.男の先祖が睡眠者を訪問して呪術を教える(チェパラ族)。
9.死霊は死の場所を彷徨し、自分の住居を訪れる(ワケルブラ族)。
10.死霊は睡眠者の夢に訪れるが、訪られた人は真の夢かどうかを呪医に見てもらい、真なら墓に食物を供え、火を転ずる(ディエリ族)。

11.死霊を捕まえて死者の胸に置く儀礼が行われる(ウォンガ・ムラ族)
(p.845~846)

 クルナイ族では、生霊は「影」の意味も持つ。これは、霊魂の像化の兆しが「影」と呼ばれるということの他に、「影」が霊魂の像化の最初の根拠になったことを示唆するように思える。

 霊魂が形態を持つのに「夢」が大きな根拠になっている。また、「夢」を舞台とすることから、身体からの遊離という観念も生まれたのではないだろうか。

 霊魂は身体から遊離するという観念を持つと、水や鏡に映った姿は霊魂だと考えられるようになる。

 チェパラ族の「男の先祖が睡眠者を訪問して呪術を教える」という例は、トロブリアンド諸島で、先祖が夢に現れ、女性に受胎を告げるという例を思い出させる。

 霊魂が身体と二重化され、生死が霊魂の身体からの遊離と結びつけられると、死霊の行く先が問題になる。これは他界の発生と深く関係しているだろう。

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