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2014/06/16

原像としてのフサマラー 2

 アカマタと聞いて、ぼくたちが真っ先に想起するのは赤蛇である。与論ではアーマッタブと呼ぶ。

 また、久高島には「カベール森の道の西側にアーマン権現という洞窟があり、この洞窟でアカマターと呼ばれる蛇を二匹とったところ、それは兄弟と姉妹であった」(小島瓔禮、「イザイホー調査報告書」1979年)という伝承がある。

 喜舎場永珣は「赤マターの神事に関する覚書」(『八重山民俗誌』所収)のなかで、「黒マター親神は一寸姿を現わしたかと思うとすぐまた隠れる。さらにまた一寸現れたかと思うと、またその姿を隠す。そのような動作を九回繰り返したのちに、やっと出現してくる(p.297)」と描写しているが、湧上元雄によれば、これは蛇が穴から出る様子を表現すると村人に考えられている」(「祭祀・年中行事の位相」1976年)(p.87『琉球民俗の底流―古歌謡は何を語るか』(2003年))。

 アカマタとは蛇、もっと言えば、蛇をトーテム(自分たちの祖先)とする人々が名づけたものだと言えるのではないだろうか。

 吉成直樹は『マレビトの文化史―琉球列島文化多元構成論』(1995年)において、蛇トーテムと海上他界の結びつきを指摘している。

 江南を原郷に持つ女性シャーマン、龍神=海神信仰が、「遅くとも縄文後期には琉球列島に登場し」ているという想定、『隋書』の、婦人が虫蛇の文を入墨するという記述(国分直一)など、琉球弧を含む周辺の文化圏の共通性から、吉成は考察している。

 奄美のアラボレでは、ノロが十五、六歳の従女の頭髪にハブを巻きつけるが、このハブは「四月送、すなわち海神の憑依する形式を持つマレビト祭祀であるウムケー・オホーリに結びついているのを知ることができる」(p.138)としている。

 蛇トーテムは、与論でも蛇を神と祀ることがあるから実感的にも頷くことができる。これが海上他界と結びついていたとすれば、アカマタ・クロマタ祭儀においては、蛇トーテムとともに海上他界も受容されたことになるが、それはこの祭儀における洞窟他界と海上他界の併存から伺い知ることができると思える。

 ここで、アカマタ・クロマタが最初から、蛇トーテム=海上他界信仰者によって形成されたとは考えられない。それなら、アカマタ・クロマタも海上から来訪するのでなければならないはずだ。

 そこでぼくたちは、原像として「雨乞い」のフサマラーがあり、蛇トーテムが複合される段階と、時期の前後は分からないが、粟の豊年祭に編成される段階があり、ついで稲の豊年祭へと編成されたという考えを持つことになる。

 雨乞いは、農にとって重要だが、狩猟・採取の段階でも生命にとって不可欠である。また、アカマタ・クロマタの来訪神を「草から生まれし者」、つまり精霊そのものと見なす信仰の濃厚にあるのを認めることができる。これらの要素は、祭儀自体は、粟、稲と農耕段階のものへ移行しているが、アフリカ的段階まで届くものとして捉えることができる。

 

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