65.「琉球墓制の性格」
「琉球墓制の性格」(酒井卯作『琉球列島における死霊祭祀の構造』)。
墓制の順序。
1.洞窟墓 散骨
2.石積墓(亀甲墓)
3.石塔 破風墓
琉球列島の葬制の沿革をみるときに、両墓制の成立は困難であり、複葬制の成立すらも歴史的には新しい風習と考えている(p.497)。
珊瑚礁より成り立った地質の故に、地表が浅く、埋葬することが困難という理由から、どしても地上葬の形式をとらざるをえない(後略)。山野に「放置された」とみられる人骨は、その埋葬できないという地質上の理由によるものとみられる(p.498)。
野ざらしや洞窟墓をどう理解するかというと、これは死霊観念の強さのために、死者はなるべく境界の外へ放棄しようとするか、洞窟の中に押し込めようとする意図が直接の理由であったと思う。とくに注意してみたいのは、死者を放棄するのは(中略)、マブイ(守護霊)を除去してしまえば、肉体はまったく価値のないものである。そういう考えから、死後に行われるマブイ別しを機会に、死者は放棄されて顧みられないというのが古風な形であったろう。埋葬できないという地質上の理由と、死霊に対する考え方は相互に関係しながら、こうして琉球の特殊な墓制を作りだしていくので、葬式のことをカクス(八重山)、ステル(宮古)、オサエ(奄美)などの言葉はその付近の事情をうまく表現している(p.499)。
「野ざらしや洞窟墓」は、光と闇が交錯して他界への入口となる場所だから、その境界域として葬地に指定された。琉球弧では死霊観念だけというより精霊観念が強い。ということは肉体より霊魂を人間の本質と見なしたということだ。それが、「カクス(八重山)、ステル(宮古)、オサエ(奄美)」という言葉の意味である。
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