52.「長寿葬」
「長寿葬」(酒井卯作『琉球列島における死霊祭祀の構造』)。
長寿者の死は一種の慶事。
カジマヤー、またはト-カチの前夜。
当人が寝込んで枕元に死者の時と同様、枕飯を供える。長男が、「もうあの世に行かれる年頃ですからおひきとりください。そして後生で子孫の繁栄を見守って下さい」と言う。一夜明けると、盛大な祝宴(p.387)。
「いわゆる擬葬とも考えられる長寿者の生きながらの葬式というものが、沖縄本島の各地にわたって、古くから行われていたということが想像される」(p.388)。
「遠野物語」の「ダンナノハナ」や「蓮台野」の民譚を思い出す。そこでは、生きながらにして空間的な他界に疎外されるが、琉球弧の場合は、時間的な疎外しか受けないことに気づく。
カジマヤー(風車)。「長寿者の死が、たとえ絶命しようと存命中であろうと、新しい生に還元されるという考えがその中にこめられている」(p.389)。
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