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2014/04/20

37.「垂直他界」

 「垂直他界」(酒井卯作『琉球列島における死霊祭祀の構造』)。


1.天上他界

 「死者の魂が天に帰っていくという思想のはっきりしているのは、最終年忌の祈願の内容である(p.277)」。

・「天に昇りんしょうれ」(宇検村)
・三十三年忌をすぎると神になって山に登る。椎の木の方枝だけ残して墓地に立てる。「山をたてて差し上げますので、山へ行って下さい」(ヤマタテ)。奄美南部
・三メートルくらい、椎の木を立てる。この木から天に昇る(加計呂麻島須子茂)

 内地の「梢(うれ)つき塔婆」と変わらない。「奄美のこの例は、いわゆる梢(うれ)つき塔婆の延長にあるような気がする(p.278)。

・墓前で盛んに火を焚き、その煙にのって天に昇る(喜界島)。
・「暫(あま)く人間(みんぎぬ)や仮ぬ宿、後生ぬ天宮(あまみや)や皆があしゃぎ」(野口才蔵、与論島)。天に通じる道しるべにはガジュマルの木が重要な役割を果たす。
・三十三年忌に竹をたてる(与那)。
・三十三年忌、「今日からは天の星となって子孫をお守りください」(多良間島)
・紙製の塔婆をつくり、それを焼く。「天に昇って神になる」(八重山)。

 最終年忌に死者が昇天するために用いられるものが、琉球北部では椎の木が目立ち、ガジュマル、榊(さかき)・柴などがそれに続く。沖縄では天に昇る手段として竹が使われ、八重山では紙塔婆となる(p.281)。

 天の言い方だけをみると、輪廻転生はここで打ち切られるようにも見える。


2.地下他界

・岩屋の洞窟を通って、その奥に後生があると信じられていた。病気が重くなると、魂がこの岩屋に走ったといって馬を引いて魂を迎えに行った。「後生が道」(笠利土濱、p.282)。
・洞窟をもって来世に通じるとみた例は宮古島に多い。
・アカマタ、クロマタ。古い方の面形はナビンドウという洞窟の最奥の地下数丁ほど下りていって、浪音の聞こえる暗闇の裡に捨てる(小浜島プーリ、p.283)。

 琉球列島では地下他界を考えようとすれば、それは土の下という感覚ではなく、むしろ洞窟の奥、木立の茂った場所というように、葬地の形態をそのまま他界観念の中に反映させている。つまり、他界観は葬法を前提として一つの型が出来あがっていくということであろう(p.283)。

 ぼくは地下他界というより、洞窟他界と言う方がしっくりくる。「葬地の形態をそのまま他界観念の中に反映させている」というより、洞窟や「木立の茂った場所」の闇に他界を見たのである。


 東西南北に対して、天上と洞窟(地下)は、他界の新旧を示すように見える。洞窟は最初の他界であり、天上は最新の他界である。最新の他界には、霊魂の転生という概念が無くなっているとすれば、仏教とともに、あるいはそれ以降に受容されたものだ。ここでの、地下他界の事例はとても重要だと思う。


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