23.「遷居葬の成立」
「遷居葬の成立」(酒井卯作『琉球列島における死霊祭祀の構造』)。
ここまでの酒井の想定を描いてみる。
1.死者が出ると家を出て、「巣変え」、つまり居を変えた。家が喪屋になる。
2.家屋が巨大化し、祭場が屋内に固定化するにともなって、死者は屋外に移され、住居が果たしていた喪屋も屋外へ移される。
この過渡期に「擬葬」(死者の置いておった座敷に着物を重ねて死人の格好に見せかける)、蚊帳や網で死者を囲う特異な形式が生れた。
また死者のための家型の厨子瓶や墓所は、死後の世界が生前同様の生活を営んでいることを意味するばかりでなく、本当は住居そのものが死者の家であったものが、死者が屋外に移されることによって、家もまた模型として死者とともに移動したものと解釈できないだろうか。いうなれば生きている人間の知恵と狡猾さによって、死者のもっている絶対的な権威を損なわないように、その領域をせばめながら、死者の置かれた場所と生者のそれを入れ替えていった過程が、喪屋の歴史ではなかったかと思う(p.170)。
すると、与論のガンプタも、それか。
中央集権制を確立するまでの間、「なぜ天皇は一代ごとに遷都する必要があったのかも考えてみる必要がある。権力の座にある者ほど、その死霊の祟りというものもまた強烈であったということがおそらくその本当の理由であろう(p.171)。
ここは、母系制が強く残っていて、天皇が妻問いしていたという吉本隆明の理解に説得力を感じる。
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