22.「死者の巣変え」
「死者の巣変え」(酒井卯作『琉球列島における死霊祭祀の構造』)。
一つの基本的な形式として、死者の家に対する強い畏怖感があって、そのために一時的、というより永劫にその家を放棄する例が多かったのではないかとみる。死者と添い寝、褥移しなどの習俗の起因は、死者は母屋に留まり、むしろ生者の方が褥を移し新たな生活の場を他に求めたのではないだろうか(p.165)。
「イキチュンチュヤ・スィゲーシュン」(生きている人は巣を変える」。(死後の「マブイ別し」の時によく使う言葉。大島南部、p.165)。
「死人を大いに忌み、死すれば家を捨つ。埋葬なし、棺を外におき、親族知己集飲す」(柳田國男、知念村の聞き書き)。
死者に対する行為の一つ一つが強い霊魂観念に支えられている。死者の出た家の「巣を変える」考え方はその具体的な例(p.167)。
「すなわち死者に対する素朴な感情は、尊崇や親近感というものより、もっと外の、遥かな遠い場所にある」(p.167)。
「家を捨つ」ことは思いもしなかったので驚くが、同時に農耕民ではないことも示唆するように思える。
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