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2014/01/02

大和那覇世

 まだしばらくはヤーナー(童名)探索を続けるけれど、年始だから区切りとして書いておこう。

 与論のことを調べれば調べるほど、思っていた以上に沖縄に近しいのを感じる。沖縄に近いという言い方は、沖縄県ではないから言うことで、他に適当な言葉がないから琉球という言葉を使えば、与論は琉球だ。そして、琉球ということも、琉球王国を指すというより、より古層に向かって時間を挿入すればするほど、それらしさを感じる。

 1980年ごろ、与論中学校に赴任した奄美大島出身の薗博明は、郷土研究クラブを立ち上げ、子供たちに島を見つめる目を教えてくれたが、当時のことを、「奄美大島以上に鹿児島であることに疑問を持っていなかった」と教えてくれたことがある。これは、与論人の、大勢への過剰適応を示すものだと思う。薩摩軍も上陸せず、米軍も上陸しなかった与論では、大文字の困難に直面することは避けられ、大勢はいつも外側で決められてしまうことが習い性になっている。それが、我関せず、大勢には従うのみという知恵と諦観を培ったきただろう。そうでなければ、二島分離返還まで復帰運動に懸命でなかったこと、昨年の奄美復帰60周年への低関心も説明しにくい。

 近代の過剰適応の現れを、方言禁止運動を鏡にすれば、それが強度を持った大勢であるうちは、琉球であることを忘れるように働くだろう。薗が赴任した当時は、まだその影響は残っていた。しかし、80年代なかば頃、学生で東京にいたぼくの実感から言うと、当時まだ観光地としてメディアに出ることもあった与論の人の、与論大和口のアクセントの共通語化が年を追うごとに進んでいるのが、メディアを通じただけでも察せられた。共通語化の進展とともに、方言禁止運動は消沈していく。言い換えれば、過剰適応が解けてゆく。

 共通語化を実現したものは何か。それは方言追放運動の成果ではない。メディアの普及である。子供の頃からテレビなどのメディアに接していた世代が成長したとき、共通語は果たされていたのである。むしろ、方言禁止運動は方言が喋れない世代づくりに寄与してしまった。

 いまそのことに、心ある人が慌てるように、過剰適応がほどけて、改めて琉球としての自分を発見していっているのではないだろうか。

 与論の後進性という。先輩郷土史家の書いた書籍には、与論には遠島人も少なかったので、人材が育たなかったという見解を見かける。ぼくはこの見解には全く組することができない。そう言っている間は、過剰適応症を免れることはできない。遠島人が少なかった。おかげでぼくたちはぼくたち自身が何者であるかを見つめやすい。少なくとも、そういう視点があっていいし、そのほうが前を向けるというものだ。

 与論は、代官所が置かれなかった。遠島人も希少であった。黒糖生産を強いられたのも、明治維新目前のことだった。沖縄島との交流は絶えていなかった。与論の支配層も琉球王府からの派遣された者たちで明治まで貫徹される。こういう歴史を踏まえれば、1609年以降、大和世になり、砂糖黍生産にあえいだという歴史像は、奄美大島の歴史に過剰適応したものとして修正されなければならない。修正というか、与論史を一からつくらなければならない。

 こうしてみれば、1609年から1871年に日本に組み込まれるまでは、大和世というより、大和那覇世とでも言う方が、実態にも実感にも適うのではないか。


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コメント

 この視点 同感です。
復帰60周年を機に 考え方、これまで捉えられてきた先輩方の視点を私の世代から変えていかなければならないと考えている。 復帰運動もあまりせずに復帰を果たした与論島では その当時を語れる方はあまりいないようだ。
エラブ島に追随しただけではなかったろうか。
 別の悪い見方をしたら 僕はその方がいいと思う。言葉の不自由をと東京ではしなくて、鹿児島市内での浪人時代に むしろ不自由した。 鹿児島弁で教鞭をとった先生方には失礼だけれど・・・。 復帰後の教育をうけた世代が もう少し奄美の現実を考えていきたいものだ。 

投稿: 泡 盛窪 | 2014/01/03 05:27

盛窪さん

とーとぅがなし。「ゆいまーる琉球の自治」のイベントの際、主催者側には、二島分離と復帰運動について語れる人という希望がありました。有馬さんが奔走しましたが果たせずでした。

言葉の不自由については、ぼくも同じことを痛感しました。

> 「復帰後の教育をうけた世代が もう少し奄美の現実を考えていきたいものだ。」

がしがし。^^

投稿: 喜山 | 2014/01/03 06:49

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