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2013/11/23

スィディガフウ(孵で果報)は、予祝的な「ありがとう」

 宮古島のありがとう、「スィディガフウ」を考えようとすると、柳田國男が思い出される。

育つ・育つるという日本語の方は、凪く展開を停止したようであるが、西南諸島のスダテイン(育つる)等は、別に原形のシデイン・シデイルンがあって、人の生まれることから卵のかえることまでを意味し、スデミヅは産井のミヅ、スデガフーは大いなる喜悦の辞、さらにこの世の衆生をスヂャという語も元はあった。旧日本の方でも、方言にはまだ幾つもの痕跡があとづけ得られる。たとえば、育てるというかわりに、大きくするという意味のシトネル、または成長するという意味のシトナルなどは、人を動詞にしたようにも考えられていたが、実際にはこの南方のスデル系と同系の語らしい。(「稲の産屋」『海上の道』

 シトネルは、シネリキヨと音が似ているのか似ていないのかが別の連想で気になるが、今は置いておくとして、柳田の言うとおり、「シデイン・シデイルン」が古い言葉だとすると、「スィディガフー」の「スィディ」は、他の「ありがとう」系列の、拝系、尊系、頼系、誇系とは異なり、語が先にあって、「孵で」の漢字を当てていったものだと思える。

 「産井のミヅ」の「スデミヅ」は、おもろでも頻繁に表れ、世界を蘇らせるという含みを与えられている。

あおりやへが節
一 あかわりぎや おもろ
  安須杜(あすもり)の
  世持(よも)つ孵(す)で水(みづ)よ みおやせ
又 今日(けお)の良(よ)かる日(ひ)に

(255 巻五)

 「大いなる喜悦の辞」と解している「スデガフー」は、ニフェーデービルが、祈願の所作、トートゥガナシが神そのものに由来するとすれば、祈願によってもたらされる状態に焦点が当てられていると思える。これが感謝の意味になるということは、相手に対する予祝を含意して使われるようになったのだと思える。

 また、カフー(果報)は、新しい言葉だが、ニフェーデービル、トートゥガナシ、フガラッサ、タンディガタンディとは異なり、スデ、スィディのなかに、古さを宿した「ありがとう」なのかもしれない。



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