« 与論、かゑふた、根の島 | トップページ | 玉の御袖加那志の与論 »

2013/10/19

「根国」のなかの与論

 「おもろそうし」に「根の島」と記されたからといって驚くのはまだはやい。与論は「根国(ねくに)」としても謡われる。「根の島」は、「島」が付くのでまだ地続きに思えなくもないが、「国」となると話は違う。「根国」、元になった国、共同体の中心と言われると驚きは増すと言うものだ。

 「根国」とあるおもろは、数えると25点あるが、その顔ぶれがすごい。数の順で言えば、佐敷が八点、玉城が六点、糸満が五点、浦添が四点、中城が一点で、与論も一点だ。佐敷、浦添は琉球王府、尚氏の拠点となった場所であり、糸満は南山の拠点、中城も、与論にも伝承の残る護佐丸によって築かれたとされる。そして玉城も吉成直樹によれば、首里の国王と玉城按司はともに「島の主てだ」(天上の太陽が地上に現れた存在としての王」(p.243 『琉球王国と倭寇―おもろの語る歴史』 2006年)と、そのつながりが指摘されている場所なのだ。玉城は、アマミキヨ神話としても知られる。

 この名高い顔ぶれと与論の接点と言えば、知られていることのなかでは、玉城とアマミキヨ神話でつながり、浦添の外間から、第二尚氏の支配者がやってきたことくらいだ。「根国」仲間の一員としての与論は、ルフィの仲間のウソップ、あるいは、ランブル・ボールを禁じられたチョッパーのように、頼りない。どうして、こんな顔ぶれのなかに、一点とはいえ、与論が入っているのだろう。

 与論が謡われる「はつしにやが節」も、徳之島に通って宝を支配者に奉らせるというのだから、与論らしくない。

はつにしやが節
一 与論(よろん)こいしのが
  真徳浦(まとくうら)に 通(かよ)て

  玉金
  按司襲(あじおそ)いに みおやせ
又 根国(ねくに)こいしのが

(932、第十三 船ゑとのおもろ御さうし、天啓三年)

 しかし、他の「根国」おもろも、同様の、武力を誇るものばかりだ。

あおりやへが節
一 中城(ぐすく) 根国(ねくに)
  根国(ねくに) 在(あ)つる 隼(はやぶさ)
  徳(とく) 大みや
  掛(か)けて 引(ひ)き寄(よ)せれ
又 鳴響(とよ)む 国(くに)の根(ね)
  国(くに)の根(ね)に 在(あ)つる 隼(はやぶさ)

(53、第ニ 首里王府の御さうし、万歴四十一年)

[訳注](『おもろさうし(上)』

鳴り轟く中城は根国(国の中心)である。根国にある隼(船名)で徳之島、奄美大島を保護し支配して引きよせよ。

 中城の勢力が、徳之島、奄美大島を支配権に入れようと武力を発動している。

 武力歌謡が多いのは中身だけではなく、歌謡名によっても示されている。25点のうち四点の歌謡名は、中城おもろもそのひとつで、「あおりやへが節」だ。「あおりやへ」は、「島討ち」とかかわって謡われ、「もっとも信頼できる「島討ち」のための強い霊力を持つ神女だからと考えたい」、と仮説されている(p.105、『琉球王国と倭寇―おもろの語る歴史』 2006年)

 「うらおそいのおやのろが節」、「うらおそい節」は言うまでもなく、「きこへきみがなしおかててよろいわとくが節」は、聞得大君にちなむ。また、二点ある「もゝとふみあがりが節」。「もゝとふみあがり」は漢字で示せば、「百度踏み揚がり」で、驚くがこれは人名だ。普通名詞的にも使われるが、尚氏の王女の名でもあった。「百度も高みに登っていく」という意味から、谷川健一は「シャーマンダンスの状態を示したもの」とし、吉成も「きわめて巫性の強い性格を持つ神女だ」としている。(p.253、『琉球王国と倭寇―おもろの語る歴史』 2006年)

 与論の「こいしの」神女も、「久米のこいしの」と性格を同じくするとすれば、航海守護の神女だ。

 そうだとしても、この武力による支配の系列のなかに、与論がその名を連ねるのか、皆目分からない。芸のないことはなはだしいが、茫然とするというのが正直なところなのだ。



 

あおりやへが節
53
一中城 根国/根国 在つる 隼/徳 大みや/掛けて 引き寄せれ/又鳴響む 国の根/国の根に 在つる 隼

もゝとふみあがりが節
471
一阿嘉のお祝付きや/饒波のお祝付きや/今日 し居る 使い/百度の 使い/又沢岻の根国/沢岻の真国

もゝとふみあがりぎやあすぶきよらが節
472
一阿嘉のお祝付きや/饒波のお祝付きや/ゑいとてだ/又沢岻の根国/沢岻の真国

1012
一佐敷親樋川/堰 積みよわちへからは/今からど/御肝せぢ 勝る/又根国親樋川
一さしきおやひかわ/せ つみよわちへからは/いみやからと/おきもせち まさる/又ね国おやひかわ

1015
一佐敷 おわる 思ひ子/真人 選で 寄せて/神座のくひよもい 佩けわちへ/又根国 おわる 思ひ子

1016
一苗代の門に/いきせりしよ 待ちよわれ/金ちや猪口/据ゑ並めて お待ち/又根国苗代に

1017
一佐敷金杜に/おわもりは 遊ばちへ/金の もちろきよる/清らや/又根国金杜に

1079
あおりやへが節
一浦添の根国/百度 積も 金/浦添ど 有り居る/又渡嘉敷の真国

1080
あおりやへが節
一浦添の根国/泉 清水 げらへて/孵て水よ/おぎやか思いに みおやせ/又渡嘉敷の真国

1223
きこへきみがなしおかててよろいわとくが節
一大城 おわる/世掛けにせ按司の/御駄連れが 見物/又国根 おわる/又糸数 使い/根国の 使い

1230
ひやくなからのぼてが節
一百名から 上て/根国から 上て/島 揃て/十百末 みおやせ/又首里杜 ちよわる/おぎやか思い加那志

1253
きこへきみがなしおそてそろへわちへが節
一大城 おわる/世掛けにせ按司の/御駄連れが 見物/又国の根に おわる/又糸数の 使い/根国の 使い

1260
ひやくなからのぼてが節
一百名から 上て/根国から 上て/島 揃て/十百末 みおやせ/又首里杜 ちよわる/おぎやか思い加那志

1279
おもろねやがりがひやくさが節
一せしきよ金ぐすく/良かる金ぐすく/思揚げのぐすく/てだが 誇りよわちへ/又糸数の根国/玉城真国

1280
おもやけのぐすくの節
一せしきよ金ぐすく/良かる金ぐすく/玉寄せぐすく/てだす 世わ ちよわれ/又糸数の根国/玉城真国

1295
うらおそいのおやのろが節
一佐敷寄り上げの杜に/島寄せる鼓の有る按司/又根国寄り上げの杜に

1295
うらおそいのおやのろが節
一佐敷寄り上げの杜に/島寄せる鼓の有る按司/又根国寄り上げの杜に

1298
うらおそいおもろの節
一佐敷から/御捧げや 上て/八千代 世のつほに/御み神酒 ぬき上げは/後勝る拍子/打ちちゑ みおやせ/又根国から/御捧げや 上て/八千代 世のつほに/御神酒

1335
ちやうやうへましが節
一波比良 在つる御腰/根国 在つる剣/世添いの御腰 ゑ/真玉ど 照り居る/又福地 在つる御腰/根国 在つる剣

1336
うらおそい節
一波比良杜ぐすく/石橋は こので/よきあがりしよ/手摩て 栄よわれ/又根国杜ぐすく

1344
にしかないの節
一山内子ぎや/兄部子ぎや おもろ/揚がる望月/君の 清らや/又福地 おわる/根国 おわる 世の主

1345
あがるもちづききみの節
一山内仁屋が/兄部子ぎや おもろ/西貢 寄せて/又 良く 勝る 東貢/前 寄せて ちよわれ/又福地 おわる/根国 おわる 世の主

1354
あおりやへが節
一真壁 おわる/根国 おわる 世の主/百島 島 討ちちへ 凪やけれ/又真壁人 選びよわちへ/又掟 選びよわちへ/又那覇港/橋 渡ちへ 道 渡ちへ/又那覇 渡て/いなそ嶺 淀しよわ

1532
うらそいのおやのろが節
一佐敷寄り上げの杜に/島寄せる鼓の有る按司/又根国寄り上げの杜に

|

« 与論、かゑふた、根の島 | トップページ | 玉の御袖加那志の与論 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「根国」のなかの与論:

« 与論、かゑふた、根の島 | トップページ | 玉の御袖加那志の与論 »