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2013/10/13

「与論おもろ」は十四点

 「かい(ゑ)ふた」とは、「ふた」に対する美称、敬称であり、固有名詞としても普通名詞としても使われているという視点を得たので、「与論おもろ」は何点あるのかという課題に迫りたい。

 まず、歌謡名に「かいふた」の含まれる、「かいふたの大ころが節」は、540、551ともに、詞内容は与論に触れているわけではないので、「与論おもろ」はないと見なせる。

かいふたの大ころが節
一 平良(たいら)こしらへや
  降(お)れ直(なお)せ 神々(かみく)
又 杜(もり)のこしらいや
又 今日(けお)の良(よ)かる日(ひ)に
又 今日(けお)のきやかる日(ひ)に
又 我謝杜(がぢやもり)に 降(お)れわちへ
又 百人(もゝ)そ 引(ひ)ちへ 降(お)れわちへ
又 七十人(なゝそ) 引(ひ)ちへ 降(お)れわちへ
又 あまみやふた 降(お)れわちへ
又 しねりやふた 降(お)れわちへ
又 首里杜(しよりもり) 降(お)れわちへ
又 真玉杜(まだまもり) 降(お)れわちへ

(540、第十 ありきゑとのおもろ御さうし、天啓三年)

 船旅の歌謡である554と868は、「せりよさにから かいふたにかち かいふたにから 安須杜(あすもり)にかち」と、「かいふた」は、沖永良部島(せりよさ)と安須杜に挟まれて、位置関係と矛盾がないので、「与論おもろ」だと見なせる。

 928~933の六首については、「与論」に関わる可能性のあるキーワードを挙げてみる。

928 かゑふた、根の島
929 かゑふた、根の島
930 かゑふた、真徳浦、根の島
931 与論、真徳浦
932 与論、真徳浦、根国
933 かゑふた、根の島

 まず、931と932は、「与論」そのものが含まれている。この二首では、「真徳浦」との関わりが歌われているが、同内容の930の「かゑふた」も「与論おもろ」と見なせる。また、930では、同時に、「根の島」という言葉も含まれるので、「かゑふた」と「根の島」がセットで出てくる、928、929、933も「与論おもろ」に含めていい。

 以上から、928~933の六点は「与論おもろ」である。これらが連番であることも、上記の見なしを補強する。

 541と957には、両方とも「かい(ゑ)ふた」も「与論」も出てこない。外間守善校注の『おもろさうし』では、「古里」を与論の地名であるとしている。詞内容は、「大みつのみぢよい思(も)い」、「大みつのみて思(も)い」という人名が出てくるが、地名の手がかりになるものではない。琉球弧には他に徳之島に「古里(ふるさと)」地名があるので、そこを留保した上で、『おもろさうし』の解説に倣い、上記二点は「与論おもろ」に見なすことにする。

一 大みつのみぢよい思(も)い
  追手(おゑちへ) 乞(こ)うて 走(は)〔り〕やせ
又 古里(ふるさと)のみぢよい思(も)い
又 みぢよい思(も)いが 初旅(うゑたび)
又 みぢよい思(も)いが 新旅(あらたび)
又 御酒盛(よさけも)り所
又 御神酒盛(ゆみきも)り所
又 弟者部(おとぢやべ)は 誘(さそ)やり
又 乳弟者(ちおとや)は 誘(さそ)やり

(541、第十 ありきゑとのおもろ御さうし、天啓三年)

 そして、237であるが、これは普通名詞として使われている可能性はないだろうか。こう疑ってみたくなるのは、「奥武の嶽大王」、「なです杜大王」、「厳子達」と、按司や兵士に関わる語句が出てくるので、与論に似つかわしくないという先入見が過るからだ。しかし、「奥武の嶽大王」、「なです杜大王」は「かゑふた」にいる人名として歌われているから、この「かゑふた」も固有名詞と考えられる。

うらおそいおやのろが節
一 玉(たま)の御袖加那志(みそでがなし)
  げらゑ御袖加那志(みそでがなし)
  神(かみ) 衆生(すぢや) 揃(そろ)て
  誇(ほこ)りよわちへ
又 奥武(おう)の嶽(たけ)大王(ぬし)
  なです杜(もり)大王(ぬし)
又 かゑふたに 降(お)ろちへ
  厳子達(いつこた)に 取(と)らちへ

(237、第五 首里おもろの御そうし、天啓三年)

 1515には「かい(ゑ)ふた」名は出てこないが、237と同内容であり、「奥武の嶽大王」、「なです杜大王」の名前も出てくるので、237が「与論おもろ」であるなら、1515も「与論おもろ」と見なせる。

 残るは、1009である。このおもろには、「かいふた」地名が出てくる。詞内容は、「東方に 通て」、「てだが穴に 通て」と、おもろでよく見かける定型の内容なので、この「かいふた」は普通名詞である可能性を持つ。しかし、「なです杜大王」の存在を認めると、「金杜」と敬称化された場所と等価と見なせるので、これも「与論おもろ」に数え上げられることになる。

一 かいふたの親(おや)のろ
  東方(あがるい)に 通(かよ)て
  今(いみや)からど
  いみ気(き)や 勝(まさ)る
又 金杜(かなもり)の親掟(おやおきて)
  てだが穴(あな)に 通(かよ)て

(1009、第十四 いろくのゑさおもろ御さうし)

 以上から、前に抽出した十六点のうち、、「かいふた」が普通名詞として使われている540、551を除いた十四点が、「与論おもろ」であると見なせる。


「与論おもろ」

237
541
554
555
868
928
929
930
931
932
933
957
1009
1515

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