ウドゥヌスー=御殿の後
私家版『辺戸岬から与論島が見える<改訂版>』を読んでいて、愉快になった。
現在、茶花漁港となっている所が当時アガサミナト(赤佐港)とよばれていた茶花の泊地だが、その後背地で、現茶花自治公民館のあたりは、番や蔵なども置かれていて、今でもこの地域を「ウグラ(御蔵)」といっている。又、このウグラの地から、港とは反対の北側には「ウドゥンヌスー」という砂浜があるが、この地名は、「ウドゥンヌウッスー(御殿の後)」の語が転化した地名だと思われる。『辺戸岬から与論島が見える<改訂版>』(竹内浩、2009年)
ぼくは、以前、苦し紛れに「ウドゥヌスー=布団の洲?」と仮説したことがあった。書いた本人も「笑ってやってください」としているが、それから四年、ぼくの認識は進まなかったのだから、「御殿の後」という鮮やかな謎解きが嬉しい。ウドンヌウッスーは、転訛すれば、容易にウドゥヌスーになる。地名の付け方としても自然な流れだ。
ただ、これが地名の由来であるとしたら、18世紀頃のことだから、それ以前の地名もあったのかもしれない、という想像が働く。あるいは、当時、宇和寺は未開の地であったとしたら名は無かったかもしれない。でも漁撈の民であれば、ウドゥヌスーで休息した島人もあったろうから、名はあってもおかしくない。そんな想像が広がってゆく。
わがフバマは、小さな浜の意で謎はどこにもないが、ウドゥヌスーは長年、意味の分からないままだった。それがやっと氷解した。竹内さんに感謝である。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
おはようございます。
地名の言われを調べたり考えたりするのは楽しいですね。
宇和寺の字も何処から来たのだろう・・・?
叔父さんが ピッグ・テンプルと呼んで 大笑いした。
金久の家の場所は 豚寺にあるといった。
さて ハッピーランドの地主は 野村さんで 父は 野村ていさい 昭和20年死亡とのこと
アガサの港湾工事を手がけた技術者らしい。
じんぱち・ていゆうさんらの話をききとりしたが、
ききとりしにくかった。
記録がのこっていそうな気がして
気がかりな方です。
歴史的に 重要人物ですが・・、
那間の直線道路をつくったことなど ところどころだが
とても興味のあるはなしがきけました。
南景明家の先祖とつながりがあるとのこと。
屋敷のフクギの樹が旧家であることの証です。
投稿: あわもり | 2011/02/07 04:28
「ウドゥヌスー」が「御殿の後」の意味とするのは的を得ているでしょうね。
与論方言は、言語学的には沖縄北方言(やんばる方言)に含む事もできるようですし、沖縄諸島方言の「後ろ」も「クシ」ですから「ク」が「フ」に転化したあと、脱落してしまった可能性は大きいですよ。
ついでですけど、与論の「茶花」は、沖縄島の「謝花(ジャハナ)」と同義地名と考えられますね。
その他「朝戸=安里・供利=友利・金久=兼久」など、カタカナで案内されると沖縄島にいる感じです。
投稿: 琉球松 | 2011/02/07 12:38
お久しぶりです。
ウドゥヌスー=御殿の後ろ・・・ですね。
確かに。この話題よく認識していなかったのですが,
砂浜でウドゥンとかウドゥヌ・・・と来たら,御殿が
目に浮かびます。喜界島にも御殿の鼻がありますし,名瀬にも御殿浜がありますね。どちらも,中心的な港(浜)の真ん前です。後ろを喜界島では,フシといいますが,後ろを表すフシが,ッスーと変化するかどうかが,微妙かなと感じます。事例を調べて,類例があれば,なるほどとなるのですが。要検討かなと個人的には感じたところです。奄美・沖縄の小字など調べると,同じ地名が必ずあるように思います。
投稿: shimanchu | 2011/02/07 22:19
> あわもりさん
聞き取りしたいことがたくさんありますね。「ムブガッタイ」も読みたいです。
> 琉球松さん
はい。茶花=謝花だと思います。伊波という地名もありますよ。
> shimanchuさん
ご無沙汰しています。与論では、「後ろ」は「ウッスー」なので、「御殿の後ろ」と考えるのはとても自然なんです。喜界の「御殿の鼻」から連想できたはずだなあと思います。同じ地名の発見、楽しいですね。
投稿: 喜山 | 2011/02/08 08:51
与論では,後ろをウッスーというのですね。
沖縄でクシというのを知っていたので,てっきり
与論もフシorプシかと思っていました。
クシがウッスーなのでしょうか。
新しい音韻変化の形態のように私的には感じられ,興味深くいい勉強になりました。ありがとうございました。
ちなみに,御殿は、主に琉球王族の邸宅、またはそこに住む人をさす尊称とウィキペディアにはありますが,これが沖縄本島以外では,えらい役人などの邸宅に相当するのでしょうか。
投稿: shimanchu | 2011/02/08 21:21
shimanchuさん
「御殿」が、エライ役人の邸宅の意味まで広がっていっても不思議ではない気がします。島言葉で呼べばそうなるわけですから。
投稿: 喜山 | 2011/02/13 10:57