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2010/02/22

「森林伐採 対立の火種」

 去年、400年問題について追っていた斎藤徹による記事だ。

 この問題をの行く末を決めるのは島の人だ。しかし、この問題の解決を島の人だけの問題だとすることはできない。広く多くの人に知ってもらうということは、島の人だけに解決を任せない一歩になる。瀬武が総意で賛成しているのが事実としてだが、ここでの構図は、チップ工場が地元の雇用を生むが、加計呂麻島全体の自然を損ない旅人を減らし、別の雇用を奪う可能性を持っている。

 島外を巻き込みながら、加計呂麻島全体が生きる道が模索されなければならないのだと思える。


森林伐採 対立の火種 加計呂麻島
2010年02月22日


チップ工場建設予定地ではすでに整地作業が始まっている=8日、加計呂麻島

 奄美群島の加計呂麻(かけろま)島。映画「男はつらいよ」の舞台にもなり、「にほんの里100選」に選ばれた風光明媚(ふう・こう・めい・び)な島が揺れている。大規模な森林伐採計画が持ち上がっているからだ。鹿児島市の企業が今夏の操業開始をめどに、紙の原料となるチップ生産に乗り出す事業計画書を瀬戸内町に提出。35年間かけて島の森林面積の4分の1で伐採する内容が盛り込まれている。地元では「雇用につながる」「景観や水源の破壊につながる」と賛否の声が上がっており、島を二分する対立が懸念されている。(斎藤徹)

 島北部の瀬武(せ・たけ)集落につながる県道沿い。数十本の木が伐採され重機で整地された場所がある。ここに木材を細かく砕いて紙の材料になるチップの生産工場が計画されている。近くの桟橋は建設資材で埋められている。

 「島に雇用が生まれれば、ちょっとは夢のある島になると思う」。1月29日、島内で開かれた住民説明会。チップ工場を計画している鹿児島市の「大東海運産業」の担当者はこう強調した。

 同社によると、ここ数年の中国や東南アジアでの紙需要の高まりで製紙原料の輸入材が入手しづらくなり、国産のチップが見直されているという。屋久島で50年間チップ工場を操業してきた実績を持つ同社が新たに目をつけたのが加計呂麻島だ。昨年10月に現地の関連会社の法人登記を済ませ、用地買収を進めている。

 地元の瀬戸内町に提出した事業計画書では、伐採や工場の要員として計約30人を地元優先で採用。チップを生産するため35年間で森林1700ヘクタールから木を切り出す。伐採後は若木を植林するという。

 「働く場があれば、若者も戻ってくる。島を元気づけるためには工場は必要」。瀬武集落の川畑義夫区長(74)は歓迎する。同地区の人口はわずか26世帯44人。65歳以上の割合を示す高齢化率は60%にのぼる。会社側は雇用のほか住民の生活支援も約束した。集落の総意として賛同しているという。

 同社の伐採計画面積は島の森林約6900ヘクタールの4分の1を占める。「大規模伐採で島がハゲ山だらけになるのではないか。森の動植物にも影響が出る」と、危機感を抱く住民たちは今月初め、「森林伐採に反対する加計呂麻住民の会」を結成、島外者も含め10日間で2200人の署名を集めた。

 「山の保水力を増やすには老木を切って山を再生させたほうが良い。伐採はむしろ島の山を守ることにつながる」とする同社の主張に、飲食店を営む橋口満廣さん(53)ら住民の会側は「伐採は飲み水の水源にも影響を及ぼすのでは」と納得しない。

 Iターン者を含む観光業者も不安を募らせている。島のたたずまいにほれ込み10年前、東京から移り住んだ観光ガイドの寺本薫子さんは「にほんの里100選に選ばれてから観光客も増えてきた。多くの人が『心が落ち着く。また訪れたい』と言ってくれる。島の魅力が失われる」。

 中立的な立場の住民の間にも「大多数の島民に知らせないまま計画を進めていた会社側の対応が島民の疑心暗鬼や島民同士の対立を招いた」とする指摘がある。国政選挙のたびに島を二分した対立の新たな火種になることへの警戒感を強めている。

 許認可権を持つ町当局の姿勢はどうか。今のところ「事業計画書を精査している段階」として、行政手続きを粛々と進めるにとどまっている。計画書に問題がなければ、町は今後、有識者らが加わった審議会に開発の是非などを問うことにしている。

 これに対し、環境問題に取り組んでいる「瀬戸内町環境守る会」会長で元町議の内山忍さん(83)は「町はリーダーシップをとり事態を収拾する方向に持っていくべきだ。後追い行政では混乱は増すばかりだ」と手厳しい。
 当然のことながら、伐採計画は加計呂麻島全体にかかわる問題と重く受け止める町幹部はいる。その一人は「島民の合意なしに事業を進めることはしない。100選に選ばれたことや世界自然遺産を目指していることも考慮した上で判断することになる」と慎重な構えを見せている。

 「にほんの里100選」事務局の森林文化協会によると、「100選」に選ばれた地域で大規模な開発計画が浮上しているのは、加計呂麻島だけだという。

 「にほんの里100選」選定委員で京都大学大学院の森本幸裕教授(景観生態学)の話 老木を伐採して若木を植えれば保水力が増すという会社側の説明は乱暴だ。保水力は地質と土壌の厚さなどが大きな要因。皆伐は土壌侵食を招いて保水力の長期的低下を招く恐れもあるが、帯状伐採などの方法をとれば影響は緩和できる。計画は企業とその雇用者に経済的メリットが生まれるが、「にほんの里100選」で評価された一級の自然観光資源をいかせば、島民だけにとどまらず幅広い人々が関心を寄せるだろう。それを踏まえた上で、町や島民は今後の方向性を選択するべきだ。

 加計呂麻島 大島海峡を挟んで奄美大島の南に位置する面積約77平方キロの島。リアス式海岸と豊かな自然に恵まれている。主な産業はサトウキビ栽培や真珠養殖。映画「男はつらいよ」最終作「寅次郎紅の花」のロケ地になり、山田洋次監督は故・渥美清さんが演じた主人公「フーテンの寅さん」が「今も暮らしている」と語っている。昨年1月に「にほんの里100選」(朝日新聞社・森林文化協会選定)に選ばれた。人口1490人(1月末現在)。

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コメント

雇用が生まれたとしても、島としての魅力がなくなった島に若者は魅力を感じることが出来るのかな・・・

外からの気持ちですが…

投稿: kemo | 2010/02/23 16:48

kemoさん


遅くなってごめんなさい。
少々の雇用では、若者は帰って来れないですからね。
いつか帰りたいと思っている島人には残念ですよね。自然がなくなれば。

投稿: 喜山 | 2010/03/15 21:59

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