« 「琉球弧自然フォーラムinやんばる」 | トップページ | 「『400年語り』で奄美は姿を」レジュメ 更新版 »

2010/02/04

『奄美方言入門』

 『奄美方言入門』は、1990年に私家版として出されていたのを、改めて出版したものだ。

 ここでぼくたちは、奄美の各市町村別の言葉を一覧することができる。たとえば、「ありがとう」。


龍郷町        アリガタサマ アリョン
笠利町(現奄美市) アリガテサマ リョン
名瀬市(現奄美市) アリガティサマ アリョン
大和村        アリギャッサマ リョタ
宇検村        アリガテサマ アリョオタ
住用村(現奄美市) アリガタサマ アリョン

瀬戸内町       アリゲテサマ リョン

喜界町         ウフクンデール

徳之島町       ウボラダレ 
天城町        オボラダレン
伊仙町        ウボーラーダニ

和泊町        ミヘディロ
知名町        ミフェディロドー

与論町        トートゥ ガナシ

 こう外観すると、島ごとにこれほど違うという相違点に目がいくかもしれないが、それは表層のことで、ぼくはここに相似を見出したいと思う。

 直観的でいい加減なものだが、ここには四つの系統の「ありがとう」がある。

 まず、大島は、「ありがたし」からきた「ありがとう」の言葉の影響を大きく受けているのが分かる。「ありがとう」を、それ以前からの大島の言葉で語尾を締めたものだ。

 喜界島の「ウフクンデール」と徳之島の「オボラダレン」は同系統だ。これは、「大誇り」と書かれることもあるが、それが音の類似から当てたもので、意味に沿えば、「大喜」になるものだと思う。

 三つめは沖永良部島の「ミフェデロ」だが、これは、沖縄島の「ニフェーデービル」や八重山の「ミーファイユー」と同系列で、「三拝」、「二拝」から来ていると思う。

 四つ目は与論島の「トートゥガナシ」。神への尊称がそのまま感謝の言葉になったもの。

 また、この四つの系統も、個々ばらばらに存在するのではない。知らないだけかもしれないので保留を置くけれど、大島の「アリガタ」という北の言葉は大島のみで、沖永良部の「ミフェデロ」は奄美のなかではエラブだけだが、喜界島の「ウフクンデール」と徳之島の「オボラダレン」は、「おぼこり」として大島にもあり、「プクラシャ」としては奄美の共通して分布していると思う。また、与論島の「トートゥガナシ」も奄美全体に分布している。

 これらをひとつの軸で並べることは難しいが、大島でいえば、「オリガタサマリョータ」、「オボコリドー」、「トートゥガナシ」の順に、日常性から非日常性へと流れてゆくのではないか。与論はある意味、もっとも聖性のある言葉を日常的なもにまで使っているわけだ。これは、与論らしい振る舞い方だと思う。

 補足すれば、大島の語尾の「リョタ」と、喜界島の「デール」、徳之島の「ダレン」も違うわけではない。柳田國男も指摘したことがあるように、d音とr音は転化しやすい。与論でも、寺崎は、ティラダキとティララキ、どちらの音も耳にする。似ているのだ。

 深層からみた流線のつながりのなかで見れば、島ごとの相似と受容の仕方の個性が浮かび上がってくる。

 ※「オボラダレンは、「御誇り」から」


   『奄美方言入門―奄美の各市町村別方言集―』

Amamihougen

|

« 「琉球弧自然フォーラムinやんばる」 | トップページ | 「『400年語り』で奄美は姿を」レジュメ 更新版 »

コメント

平日はパソコンを使えない(ネットを見れない)のですが,週末,楽しみに拝見させていただいております。
突然ですが,
>この四つの系統も、個々ばらばらに存在するのではない。

そうだと思います。
一考ですが,喜界島の「ウフクンデール」は,元は「ウフクンデービル」ではないかと考えています。
「行きましょう」を「イチェーラ」と言いますが,「イキハベラ」だと思われます。奄美大島も含めて八月踊りの歌詞に,今は使わない「ハベル」が普通に出てきます。沖縄の「イチャービラ」などの「ハベル」と同じです。同じように「ウフクンデービル」が「ウフクンデール」に「ビ」抜けした可能性を考えます。
「ミフェディロ」と「ニフェーデービル」の関係・・・は。
一見,一つ一つはバラバラのようでも,奄美・沖縄の言葉をつなげてみると,全体の,個別のつながりが見えてくることが多いように思います。すみません,長文でしたが。

投稿: shimanchu | 2010/02/06 14:13

shimanchuさん

コメントありがとうございます。嬉しいです。
じっくりお話ししたいものです。

与論では、「イチェーラ」は「イッチュー」です。「デービル」は喜界と同じく「デール」です。ぼくも、「デービル」と「デール」は同じと自然に思ってきました。

「ハベル」は与論の「アビル」かな。「ウガミアビラン」のように言います。

> 同じように「ウフクンデービル」が「ウフクンデール」に「ビ」抜けした可能性を考えます。

もともと「ウフクンデール」もshimanchuさんに教わったことでした。ありがとうございます。

こうしたつながりは見つけるだけで嬉しいですね。

投稿: 喜山 | 2010/02/07 14:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『奄美方言入門』:

« 「琉球弧自然フォーラムinやんばる」 | トップページ | 「『400年語り』で奄美は姿を」レジュメ 更新版 »