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2010/01/07

「近代日本の地方統治と『島嶼』」1

 弓削政己の「初期明治政府の奄美島嶼に対する政策について」で高江洲昌哉の論考を知り読んでみたくなり、国会図書館にも足を運んだのだが、「島嶼地方制度成立に関する研究」しか見つけることができず全貌が分からなかった。ところが昨年の12月、「近代日本の地方統治と『島嶼』」が出版され、望みを叶えることができたのだ。

 ぼくはまだきちんと「近代日本の地方統治と『島嶼』」を読みこめた気がしないのだが、ぼくたちにとって切実なテーマを辿ってみたい。

 明治。

「鹿児島県下大島郡ノ中、徳之島鬼界島島根県下隠岐国ノ二島ノ如キハ内地ト同視スヘカラサル状況アルニ依り出張所ヲ置クヲ聴許」

 徳之島や喜界島、「隠岐の二島」のようなところは、「内地と同視すべからざる状況」があるからと出張所を置くことになり、その根拠を与えるために明治一三(一八八〇)年に郡区町村編制法が改定された際、第七条が追加される。

「凡ソ島嶼ハ府知事県令ヨリ内務卿二具状シ政府ノ裁可ヲ得テ其制ヲ異ニスルコトヲ得」

 高江洲によれば、ここで初めて、島嶼は「その制を異にする」ことが明文化された。
 そしてこれに対してすぐに、なぜ島嶼を例外的に扱うのか議論が起こる。当然ながら、内地にも「その制を異にする」のが必要なところがあるのではないか、というのだ。ここでぼくたちにとって興味深いのは、島嶼以外にも例外措置を設けるべきであるとする主張の論客が、渡辺千秋なのである。

 渡辺千秋。そう、奄美に独立経済を敷いたあの、鹿児島県令である。

「陸地ト雖も本条ノ如ク土地人情二相違スル処アレハ亦其制ヲ殊ニスルヲ得セシメント」

 陸地と雖も「土地人情に相違するところあ」る。

「日向ノ高千穂又ハ米良雄葉山那須ノ如キ」と具体的な地名を上げつつ、これらの土地は「人智ノ未開ハ勿論総テ其状態ヲ殊ニ」し、「数百年来連綿其僻地二安スル時ハ容易ニ之ヲ改ムへカラス是亦其制ヲ殊ニスへキノ一大理由」と主張している。

 高千穂、米良、椎葉、那須などを「僻地」として挙げているのだが、奄美のぼくたちにとって沈静剤になるのは、渡辺が奄美のみを特別視していたわけではないことが分かることである。言われてみれば当たり前なのだが、県の奄美に対する常の態度を思うと、言われなければ分からないことなので、これだけのことでも収穫を感じる。

 ところで渡辺の反対意見は少数の賛同にとどまり、例外を特定の島嶼に置く根拠は「内地と状況を異にする」という「漠然とした」ままになったという。


Chihou

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