シゴーの中棚
与論の島唄に名高きシゴーの中棚への道のりへは、急斜面の道なき道を降りて行った。草を踏み足場を確かめ、ガジュマルの根茎を支えにしたりぶら下がったりしながら珊瑚の岩をつたい、やっと平らな場所にたどり着いたところにそれはあった。
盛窪さんは最初、そこを通り過ぎ、そのもう少し先にそれらしきところを、ここだと思ったという。ところが、どうも歌詞に符号しない。少し戻った場所に、穴のように窪み天井の珊瑚岩に焚火の後のように焦げた個所があるのを見つけて、ここだと確信したという。
沖縄島が正面に見え、唄の通り、伊平屋、伊是名の七離れが見える。恋人や友人と語らい歌うには最適な眺めだった。当日、もう夕刻で空も曇っていたが、晴れあがっていれば海の青が迫ってくるという。蘇鉄の間に見える沖縄島を見ながら、ぼくもそう思った。ぼくは昔の島の人のロマンや愉しみに触れた気がした。
土地の人たちと話し合いながら辿りついた場所であり、やはり地元の人同士で検証する必要があるのだ、と盛窪さん。ぼくたちは唄う代わりに民俗談義。いちばん印象に残ったのは、もっと西の方にあるという人もいるが、中棚はいくつかあるだろうという複数性のことだった。
コンクリートで階段をつくるという案もあったが、関心のある人だけに道を開く場所でいいという結論に落ち着いたという。そうなってよかった。シゴーの中棚は心のなかにあるのだ。
ぼくたちが辿った急斜面は、着物の女性にはとても無理だ。むかしは下のほうに道があってそこから辿れるようになっていたという。そこから辿れば、歌詞にあるようにシゴーの中棚が浮き上がってみえるのに違いない。いまはそれがふさがれて、近道ではあるが危険な筋をぼくたちは辿ってきたのだった。
写真は、シゴーの中棚からの眺め。沖縄島は分かると思うが、七離れが見えるだろうか。シゴーの中棚そのものは撮っていない。もちろん、それは心のなかにあるものだからである。
一
シゴーぬ中棚や 打ちやがてぃどぅ見ゆる
ヘンヤ ヌガヤルヘン
うし遊でぃ うちやがいる シゴーぬ半田
ウシヘンヨ ヌガヤラヘン
マタガリヘンヨ ヌガヤルヘン
二
伊平屋ぬ七離 打ちやがてぃどぅ見ゆる
ヘンヤ ヌガヤルヘン
うし遊でぃ うちやがいる 私達が遊び
ウシヘンヨ ヌガヤラヘン
マタガリヘンヨ ヌガヤルヘン
三
シゴーぬ中棚や 我が通てぃあたん
ヘンヤ ヌガヤル ヘン
うし我が通いぬ やしやぬ ノーダキ繁ち
ウシヘンヨ ヌガヤルヘン
マタガリヘンヨ ヌガヤルヘン
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
おはようございます。 荘一さんのパーパーの家の石垣を見に行き、ユンヌオートーを一個もぎとりました。 そのあと、海辺への道を行き止まりまで行ってみました。昔は耕地だっただろうところが藪になっていましたが、別荘地、宅地としては最高級の場所ですね。 海岸植生を生かした開発でなければならない場所だと思いました。
次回は金久の後ろの道をフバマに降りてみたいと思っています。
オオゴマダラを飛ばしましょう。
投稿: awa | 2010/01/07 02:55
awaさん
ぜひ、「海岸植生を生かした開発」にしたいです。オオゴマダラの飛ぶ。夕陽の時間も最高でしょう。
ご結婚、おめでとうございます。ゆかてー。
投稿: 喜山 | 2010/01/07 23:25