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2010/01/24

「近代日本の地方統治と『島嶼』」13

 奄美を主に見て終えようと思ったが、やはり沖縄のことも触れておきたい。
 奄美が「独立経済」をめぐって「差別」の議論がなされてきたが、沖縄は「低度ナル」というキーワードをめぐっていたことが分かる。

(前略)沖縄県及島嶼町村制は、「島嶼」側の意見反映や日清・日露戦後という時代状況を加味することで、成立した制度である。しかも、画一的地方制度の修正版であるため、沖縄県及島喚町村制は、条文の内容から町村制と「近似性」を持つため、「内地」に施行された町村制の補完制度という性格をもっていた。にもかかわらず、「低度ナル町村制」という成立根拠をとったため、町村制との断絶を匂わせる、「低度」な補完制度として位置づけられたのである。(「近代日本の地方統治と『島嶼』」

 それでは、「低度ナル」という位置づけは、「差別」制度だったのか。

 「低度」という制定目的にとらわれることなく、条文内容で評価するならば、沖縄県及島嶼町村制は従来言われてきたような、単なる差別制度ではなく、町村制との近似性をもった制度である。それにもかかわらず、低度に位置づけられた補完制度とはどういう意味か、この点を補足説明したい。これまで「低度」と町村長任免などが結び付けられ、差別制度と評価されてきた。このような評価には、地域の実情や時代状況というものが軽視される傾向があった。

 奄美の「独立経済」は「差別」というだけでは括れない「殖産興業」としての「地域振興」の側面を持っていたとすれば、沖縄に施行された「沖縄県及島嶼町村制」は、「単なる差別制度ではなく、町村制との近似性をもった制度」だった。

 つまり、沖縄県及島嶼町村制は、施行地域の名望家層の相対的不在と、日露戦後という施行時期の行政権の優位性とがあいまって、町村制が町村に与えていた行政機関的性格と名望家層による自治機関の両立ではなく、官の監督が強い官治的制度となったのである。より詳しく述べると、町村長を議会が選出する方法を除外することで、執行機関(町村長)に対する議決機関(町村会)への関与を弱めるためであった。それは、執行機関の「官」化(行政機能の強化)を促し行政権の遂行が期待されており、町村制施行地域の現状が反映されている側面もあった。つまり官選とは、現地の実状に対する対応だけでなく、行政的な配慮があったことも無視できない。沖縄県及島嶼町村制を説明する「低度」とは、内容的な意味ではなく、政策的な名目として使用された言葉である。

 沖縄は土地による資本の蓄積が進んでいなかったため、「官治性」を強化した。そこには行政的な配慮があったが、その際、「低度ナル」という言葉が使われたが、それは「政策的な名目」であった。ここは、「島嶼」という言葉が内地と違うということ以上、あいまいなままにされたことと同じである。

 高江洲は、沖縄の章で、こう締めくくっている。

 つまり、「低度ナル」という説明は、当時の政治状況との連関を隠匿する説明原理であったといえよう。
 実質的な機能という面からみると、沖縄県及島峡町村制は単純に「低度」であるという説明で済むものではない。それにもかかわらず、「低度ナル」という説明は、沖縄県及島嶼町村制の存在理由として機能していたといえる。それは、現地において地主層の薄さなど一〇〇パーセント虚構とは言えない面もあったので、「低度」という説明は、現地の人々に受け入れさせ、差別意識を与える役目を担ったことから説明できる。このように、沖縄県及島嶼町村制がはたしたイデオロギー的な役割を無視することはできない。
 沖縄県及島峡町村制とは、「低度ナル」町村制というよりも、「近似性」と「異質性」を併せ持った町村制の補完制度である。ただしそれは、機能面から見た評価である。なぜなら、沖縄県及島嶼町村制は、「低度」という外皮に覆われているため、単なる町村制の補完制度というよりも、「低度」と価値付けられた補完制度として位置づけられたのである。

 「「低度」と価値付けられた補完制度」であることが、「差別」性を抜きがたくした要因になっている。ぼくたちは、奄美の「独立経済」と同様、沖縄もまた「低度ナル」という言葉をめぐって、相似的な問題を抱えてきたことを知る。この末尾の文は、高江洲の故郷、沖縄に対する想いの強さを垣間見る気がした。


    「近代日本の地方統治と『島嶼』」

Chihou


 

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