「奄美と沖縄をつなぐ」異種格闘型トークセッション
まず、大真面目にいえばこのイベントは、薩摩の琉球出兵400年を考えるなかで企画されている。今年、奄美、沖縄、本土の各地で開かれたイベントは、東京で開催されるものはなるべく足を運び、奄美、沖縄の場合は、新聞やブログの記事を追ってきた。それはとても意義深いものだと思う。しかし一方、歴史家の歴史研究報告がほとんどであることから、その意義とは別に、未来へ向けた志向をどうつくればよいのかという課題は残るように思えた。名目だけ未来へと銘打ったイベントも21日、奄美大島で予定されているが、県主導の、露骨に市民不在のものであり、ぼくたちの未来だとは思えない。
歴史家ではないぼくたちに何ができるだろう。そう考えると、この歴史を乗り越えるために、さまざまなアプローチが考えられるが、ぼくはぼくにとって切実なテーマから始めるしかない。そう考えれば答えは自然で、「奄美と沖縄をつなぐ」ことだった。それはなにしろ、ぼくにとっては数十年来、やむことのないものだから。
人選は難航した。ただ、難航したと言っても依頼しては断られを繰り返したのではない。「奄美と沖縄をつなぐ」に関心のある奄美、沖縄の人を他に知らなかったからである。唄者の層の厚さに比べて何ということだろう、と思ってみたりした。でもそんなことはなく、ぼくが知らないだけなのだ。そんな自問自答を繰り返したが、その期間が長かった。ブログを見返してみると、5月に会場を決めたのを書いているが、パネラー決定はずっと先の9月。4か月も悩んでいたことになる。決まってみると、意外なところでそれぞれに接点を持っている方々になった。
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ところで当日のことは、トークセッションが終わると、続けて出番の藤木さんを残し、上里さん、圓山さんとは言い足りなかったことを吐き出すべくディスカッションを継続したが、それもあってシマウタコンサートの部は、残念ながら全体観をつかめていない。録画をはやく観たい。ああ、全体を通して聞く側になりたかったなあ。
トークセッションは、上里さんが顔ぶれをみて、異種格闘型ですね、と言い当ててくれたのでそれを使わせてもらった。トークセッションの中味は、なんとツイッターのツイートをgacchikoさんが編集してくれているので、なんとなくの流れは伝わると思う。
政治的な内容にはせず、統一見解を出すのが目的でもなく、立つ位置の違う四者それぞれの声から、つながることへの接点や糸口が見えて、それが会場に来ている人の立つ位置からも接点や糸口をみつけてもらえるような波状の広がりを目標にしていた。パネルディスカッションの司会は初チャレンジであり、ぼくの技量は心もとなかったが、いくつかその場で伝えられなかったことを含めてメモしたい。
藤木さんについては、その話芸を真横で聞いていられたのがぼくの贅沢だった。間の置き方、声の強弱。まるで音楽だ。また、パンフレットに載っている藤木さんの文章は、ご自身がリライトしたものだ。原稿依頼をして最初に届いたのは心温まるメッセージだった。これで十分と思っていたが、すぐに藤木さんはこちらを使ってほしいと送りなおしてきた。内容は変わってないけれど、大きく変わっていた。何か? 言葉、語り口が、だ。最初のが標準語バージョンで、次に来たのが、沖縄大和口バージョンだった。文章の親近感が俄然、変わる。ここにも芸を見る思いだった。
上里さんは、「奄美と沖縄をつなぐ」具体案を持っていたのだが、進行役の力不足と時間切れで果たせなかった。これはとても残念で、改めて公開する場があればと思う。パンフレットでは「奄美の自画像」の必要性を提案しているが、その通りでトークセッションのたどり着く先をガイドしてくれた。上里さんは、『琉日戦争一六〇九 島津氏の琉球侵攻』の出版も控えている。こちらも楽しみだ。用意した既刊の本は完売とのこと。よかった。
圓山さん。ずっと座っているので分かりにくかったかもしれないが、彼は「奄美の家」の店員さんスタイルで登場していた。おかげでぼくにはいつもの圓山さんとして接することができたが、「奄美の家」のお客さんは気づきましたか? 圓山さんは冒頭、自分たちのシマ(島)のことに精一杯で余裕がなく「奄美と沖縄をつなぐ」というテーマは考えもしなかったと話した。しかし議論はめぐりめぐって最後には、シマ(島)を根拠にした自画像を奄美も沖縄も自分たちの手でつくる必要があるというような流れになったから、冒頭に結論を話してもらったようなものだった。
みなさんにとっても感じることの多い場であったのを願っています。
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コメント
上里さんがブログにAOLINKイベントについてよくまとめてます。
有意義なイベントだったことが伝わってきます。
http://okinawa-rekishi.cocolog-nifty.com/tora/2009/11/post-eddb.html
投稿: kayano | 2009/11/18 12:57
kayanoさん
教えてくださってありがとうございます。
上里さんには、もう少し話してもらわなきゃいけなかったのに、申し訳なかったです。
ただ、おかげで今後の対話の糸口が見えたのは何より嬉しいことでした。
投稿: 喜山 | 2009/11/18 22:19