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2009/05/11

身体はマブイの衣裳

 琉球弧では、マブイと身体が永久分離することが死と考えられている。

 琉球弧では、人間の霊的存在をマブリ、マブイ、ナブイ、タマシィなどと呼ぶ。マブリ系は土着的な用語だと思われ、多様な表象がある。一方、タマシイは日本本土のタマ概念の影響を受けているとの説が有力だ。
 マブリには個性があり、生者の「生きマブリ(生霊)」と死者の「死にマブリ(死霊)」が考えられている。生きマブリは人間の生命活動を支えており、人によっては複数のマプリをもつ。マブリはちょっとした事故やショックで身体から遊離しやすい。また喜界島や徳之島では、魔物に抜き取られたり、睡眠中に身体を離れてあそび歩いたりするといわれている。邪悪な場合は人間の姿で現れて他人にたたる(イチジャマ)こともある。マブリは足がなく、背中から出入りするともいわれ、それを防ぐために背中に三角の布を縫い付けて守りとする。また背縫いのほころびを嫌う。

 マブリが抜け落ちると、夢遊病のような状態になり、無気力、食欲不振、発熱など様々な不調に悩まされる。その場合、ユタに頼んで「マブイ込ミ」「マブリ付け」の儀礼をしてもらい、すみやかに身体に戻さねば死にいたる。また自宅以外の場所で命を落としたときも、石や衣類に付着させて連れ帰らねば、悪霊となって浮遊する。一般に、身体と霊魂(マブリ)の安定した結合状態は「生」、一時的な遊離状態は「病気」、永久分離は「死」と考えられる。永久分離が確定するのは、死後四十九日境を一つの区切りとする。遺体が腐乱して骨化し、戻るべき肉体を失うからだ。死んで直後の死にマブリは不安定で、この世に残ろうとしたり、霊力が強く、生霊にとりついて連れ去ったりする。(『奄美・沖縄 哭きうたの民族誌』

 ここに言う「マブイ込ミ」や「マブリ付け」は、『ドゥダンミン』の「マーブイユシ」に見られるように、数十年前まで、濃厚にあった。

 酒井の解説や「マーブイユシ」の話を読むと、現在は、マブイは抜けているのか分かりにくいし、抜けていても戻しにくい社会になっているのだと思う。

 ここではマブイの衣裳が身体であり、ハジチ(針墨)は言ってみれば、マブイのおしゃれだった。


『奄美・沖縄 哭きうたの民族誌』15

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