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2009/02/18

鈴木ゆりあ写真展 「TRAFFICAL ZONE」-モノの気配と先端の溶解

 ゆうべは、鈴木ゆりあの個展のオープニング・パーティに、妻と参加させてもらった。

 錆びた鉄、切り取られた金属の断面、水浸しの手袋、主のいなくなった蜘蛛の巣。たとえば、人が立ち去った後のそんな光景に鈴木ゆりあは引き寄せられてゆく。その場に立ち尽くすというだけではなく、被写体となるものそのものに引き寄せられてゆく。被写体への接近は、被写体の全体感が失われても続けられる。

 どうして接近してゆくのかといえば、被写体のモノとしての名や全体像に囚われたくないから、というのではないと思う。そんなことはお構いなしに、鈴木ゆりあが引き寄せられるものをリアルに感じ取れる距離まで近づくと、そこにモノの全体は意味を無くしているということだと思う。

 人が立ち去った後の破片のような人工物に引き寄せられるから、仮に東京がゴースト・タウンと化しても、彼女は写真を撮り続けていけるだろう。そんな想像がよぎる。けれど、彼女の関心は死なのではない。彼女が引き寄せられていった先に、モノの全体感の意味を失った、そこには、モノの気配がある。ここにいうモノとは、与論言葉でいうムヌ(物の怪)のニュアンスに近い。幽霊とか別のものが映っているというのではない。何かがある、というように感じられる。それは生命というには強すぎるかもしれない。色、であってもいい。線香花火の最後の輝きのような、それは弱いのだけれど、でも終りというのではなく。そんなモノの気配が感じられる。

 あまりに接近して見つめると、モノはその先端から溶解してゆく。その溶け出す瞬間を、鈴木ゆりあは逃さず撮ろうとしているのではないか。そんなことを思いながら、円形の写真展を眺めた。

 少し付け加えると、彼女が都心の人工物に吸い寄せられた作品を展示したとはいえ、彼女は都心のみの棲息者ではない。ぼくが鈴木ゆりあと最初に会ったのは、与論島の百合が浜沖という自然のただなかだった。彼女はきっとそういう生命にあふれた場所でも、モノの全体感というより細部に接近しモノの気配を感じ取ろうとするだろう。「TRAFFICAL ZONE」というのは、それが感じ取れる領域のように、ぼくは感じた。

 彼女自身の言葉は、こうだ。

それは定まることはない。自在に姿を変える。
それはどこにでもあるが、当たり前ではない。
それは語らない。自身の中で反復するのみだ。
それと私と街と、どれをも切り離すことは出来ない。
どれかが欠けたらそこには何もなくなる。
それは点ではない。うねりや引き合いをみせる。
それは留まることはない。すぐにどこかへといなくなる。
それは見つからない。ふいに包み込まれる。
そこにあるものを捉えようと私は街を彷徨う。
街との間を自ら行き来して創り出す不可視な領域「TRAFFICAL ZONE」。
それはなくならない。もともと形の無いものだから。
それを追い続ける私自身が在る限り、それは在り続ける。


◆鈴木ゆりあ写真展 「TRAFFICAL ZONE」
◇場所:ギャラリー21(ホテルグランパシフィックLE DAIBA3F) 
◇日時:2月17日~3月29日 10時~20時まで
◇アクセス:ゆりかもめ「台場駅」

 ※「写真作家デビュー」

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コメント

懐かしッ!!!ゆりあちゃん頑張ってンだね(^O^)
作品が視てみたいです☆

投稿: YUMIKO | 2009/02/19 15:20

YUMIKOあんにゃー

ぼくも会うのはあの時以来でした。格好よかったですよ。

http://www.klee.co.jp/art/g21/2009/yuriasuzuki/index.html

ここで少し雰囲気、味わえます。立派でしょう?

投稿: 喜山 | 2009/02/20 12:57

凄いな夢は諦めずに追い続ければ叶うだな

投稿: YUMIKO | 2009/02/21 23:35

YUMIKOあんにゃー

若いときに自分のやりたいものを見つけるのはすごいということでもありますね。

投稿: 喜山 | 2009/02/22 10:09

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