与那国=与論
小倉進平は、1477年、済州島民が与那国島に漂着したが、与那国の島人から聞いた島名に彼らがハングルで当てた字を見ると、「ユンイ」と読め、「ユン」は「与那・ユナグニ等におけるユノまたはユナに宛てたものと思われ」、「イ」は、「特別の意味無く添えられたものと見て差支えないと思はれます」としている。(村上七郎『琉球語の秘密』)
もちろん、ぼくがここで注目するのは、石垣島などからユノーンと他称される与那国島について、島人の発音をユンイと聞きとっていることだ。与那国島のドゥナンのd音はy音と等価なので、ドゥナンはユナンである。
すると、ユナン、ユノーン、ユンイは、取りうる表音の変化の範囲内にあることになる。
ここで、「ユナ(juna)」がこれらの地名の本源であると仮定する。
するとまず、ユナン、ユノーンへの変化を想定することができる。
juna > junan > junon
後段の変化は、「a」について、ア行同一行内の転訛(a > o)である。また、同じく、ユナは、ユンイとも呼ばれた。
juna > juni > junni
この変化は、「i」について、ア行同一行内の転訛(a > i)である。そしてこう書くと、ユナがユニと呼ばれることと、ユンイと呼ばれる(聞こえる)こととは同じだと見なせる。同様にユンイとユンニは区別がつかない。
また、最後の「i」について、ア行同一行内の転訛(i > u)を想定すれば、
juna > juni > junni > junnu
として、「ユンヌ」になる。
ここまでくれば、徳之島のヨンニ浜、与那国島のダンヌ浜への転訛も想定しやすい。
juna > juni > junni > jonni
> junnu > jannu - dannu
◇◆◇
整理してみる。
juna(ユナ・砂) > junan > junon (ユノーン・与那国島の他称)
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juni(ユニ・砂) dunan(ドゥナン・与那国島の自称)
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junni(ユンイ・15世紀、朝鮮人記録の与那国音) > jonni(ヨンニ・徳之島の浜名)
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junnu(ユンヌ・与論島の自称)
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jannu
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dannu(ダンヌ・与那国島の浜名)
juna(ユナ・砂)を本源に置くと、ドゥナンへもユンヌへも行くことができる。また、与論はユンヌと呼ばれる前、ユニやユンニと呼ばれた時期のあったことが想定できる。この間、国頭の与那(ユナ)と区別する意識も働いただろう。
こうしてみると、与那国島と与論島は、与那、与根(ユニ)、与那覇と意味を同じくした、気づかれていない「砂浜」系の地名なのではないだろうか。
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