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2008/12/01

「<無国籍>地帯、奄美諸島」

 「NPO法人ゆいまーる琉球の自治」の「“無国籍”地帯、奄美諸島」の記事で知って注文したらもう手元にあるのだから、インターネットというか、アマゾンは速い。この速さは、自分で書店に行って買ってくるのよりも速いと感じさせる。

 これは、書店に行くまでの時間が省略されているように感じられること、そして、書店で買うのが買いにいくという能動性があるのに対して、アマゾンは届けられると受動的に感じられること。アマゾンの速さは、この二つの要素が絡んでいる。それは、待ち遠しいものが早めに届いたというより、買ったのを思い出す前に届くという意表を突かれる感じが伴うときはさらにそうだ。


『反復帰と反国家―「お国は?」 (沖縄・問いを立てる)』

Okuni_2














本稿では<国籍>を、<帰属すべき場所><国家><実態>という意味で使っている。

 前利のいう「無国籍」を、ぼくのほうへ引き寄せていえば、二重の疎外による空虚感を、国籍の非所持として捉えたものだと見做すと理解しやすい。

 <無国籍>状態ゆえに、奄美諸島の人々は<国籍>を求めてきた。大多数の人々は<沖縄(琉球)国籍>ではなく、<日本国籍>を求めた。なぜなのか。その背景を明らかにすること、そして<無国籍>をコンプレックスとしてではなく、積極的にとらえなおしてみたい、というのが本稿のテーマである。

 これもぼくに引き寄せると、二重の疎外の克服というテーマと重なるものだと思う。
 大多数の人々はなぜ、<日本国籍>を求めたのか。これは二重の疎外の文脈からも答えることができる。奄美は、<琉球ではない。大和ではない>という二重の疎外を受けてきた。それは、奄美にとって、自分のシマ/島をまとめる共同性を失ったことを意味した。奄美というまとまりは存在しないからである。

 近代人は、薩摩人にして日本人、長州人にして日本人と自称することができるが、奄美は、その日本人という同一性の前提になる差異を持たない。それこそ何者でもないから、差異をシマ/島という最小単位に預けたままその空虚をも満たす勢いで日本人になったのである。日本人になるということが、同一性の保証というだけでなく差異を満たす役割も担う。前利が構築の意味で使った<奄美人>が差別概念として受けとめられてしまう所以だ。

 ここで、奄美が「琉球」に飛びつかなかったのは、二重の疎外を受けているからということと、「日本」という概念が近代国家だったからである。近代国家という意味は、当初、皇国民という宗教性を免れていなかったとしても、その下での自由と平等が謳われている。奄美は、日本人になることで、自由と平等を手にすることができると直観したはずである。日本人になるという選択には、奄美の空虚を満たすというだけでなく、自由と平等が展望されたのだ。この空虚と展望の分、奄美は超日本人と化す。奄美はその意味で日本の民族ナショナリストを生みだしてきたはずである。

 前利はその近代化の過程を、地租改正、徴兵制度、参政権、学校教育と詳細に追っている。

◇◆◇

 奄美は奄美という共同性を持つべきなのか。前利は持つべきではない、と言う。

 さて、それでは<奄美>という<国籍>=統一体を持つ必要があるのか。<国籍>を持つことは、必然的に周縁をつくる。奄美諸島は、それぞれの島が主体であるべきだ。奄美諸島は、歴史上、統一体を形成したことがない。島津氏(一六〇九年)によって、<奄美>という地域が形成されたと考えるべきだ。

 ぼくも、奄美は「それぞれの島が主体であるべきだ」と思う。
 それに、まだそれぞれの島の主体をつくる段階にある。加計呂麻島を出るまで自分の島が加計呂麻島であることを知らず、与論を出るまでそこが奄美とも呼ばれていることを知らない段階では、<奄美は奄美である>という命題は自同律を構成しない。<奄美は>という主語に各島々が参加できたとしても、<奄美である>という述語は、奄美大島になってしまう。その他の島は、鋳型から飛び散る液化金属のようにはじき出されてしまうしかない。復帰嘆願のとき、奄美の島々を「奄美大島」と表現したように、行政区域を「大島郡」と称するように、<奄美は奄美である>という命題は述語のところで、南北200キロに伸びる巨大な<奄美大島>になってしまうだろう。それは、発語する者の理念や良心に関わらない。

 いまは各島が固有の輪郭をつくろうとする途上にある。もし各島の輪郭がはっきりしたら、まとまりとしての奄美を検討することができるし、それは選択肢としてあっていいと思う。その選択が二重の疎外を克服する中身を持っていれば。そうでない段階では、大島という中心とその余の周縁という構図が、あからさまに再生産されてしまうだろう。

 「<無国籍>地帯、奄美諸島」に触発されて、そんな連想をした。



 

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