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2008/12/05

「大島」解体論

 日本復帰をめぐる文書を見て混乱するのは、「奄美大島」が「奄美群島」を指すことがあることでした。

 宣言
おもうに、わが郷土奄美大島の日本復帰は民族的に歴史的に、はたまた文化的にみて、当然実現さるべきものであり、終戦このかた、二〇余万全住民のひとしく望んでいる悲願であります。

 たとえばこの宣言は一九五一(昭和二六)年の「奄美大島日本復帰協議会」が出したものですが、ぼくはこの文章に触れた時、日本復帰は「奄美大島」単独で始めたものだったのかと思いかけましたが、「二〇余万全住民」という数字を見て、奄美全体を含んでいるらしいと思いなおしました。

 しかし、また別の文書でも混乱はやってきます。

 奄美大島日本復帰についての陳情嘆願書
   まえがき
われわれ日本人が太平洋戦争に敗北して受諾した、カイロ宣言、ポツダム宣言並びに降伏文書によって、日本国の最終的領土決定権をもたれる各連合国政府、同じく連合国々民並びにその厳粛なる代表であられる貴官に対して、日本国領土決定に関する、われわれ奄美群島人民二十二万余人の血涙の悲願を被れきし、ここに十四才以上の住民がおのおのの自由に表明した署名録をそえて、左の陳情嘆願書を送上いたすものであります。

 これは同年の嘆願書ですが、この「奄美大島日本復帰」という表記を見たときも再び、復帰は大島単独で行われた時期があったのかと思いましたが、中身を見ると「奄美群島人民二十二万余人」とあり、早合点であることに思い至ります。しかし、なぜこのような表記のぶれが生じるのだろうと不思議でした。

 で、原口虎雄がこう解説しているのをみて再び驚くわけです。

「奄美」または「大島」は、広義には大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与路島・加計呂原島・請島・与論島などのいわゆる「道之島」即ち奄美群島をさし、狭義には「大島」を指す。(「奄美大島の耕地制度と農村の両極分解」一九八〇年)

 「広義」には「大島」で喜界島も与論島も含まれる! 驚くわけですが、考えてみれば行政区域名も「大島郡」。実にこの広義の意味に添って名づけられていました。今まで気づかなかっただけのようです。

 しかし、「奄美」が「大島」のことを指す場合もあれば、「諸島」を指す場合があるのは分かりますが、「大島」が「諸島」を指す場合があるという用法は無い方がいいのではないでしょうか。

 それはまず誤解を生み、復帰関係の文書を読むぼくがそうであったように混乱します。ふつう、「大島」という呼称は「大きい」ことに地勢の特徴を持つ「島」のことを指すのであって、島々のことは指しません。

 でもそれ以上に困るのは、「大島」が「奄美諸島」を含意することが、「大島」のみを語って「奄美諸島」を語ったことになるという単純化を生みやすくさせてしまうことです。現に奄美論を渉猟する過程では、「それは大島のことであって奄美のことではないでしょう」という声を上げたくなることが何度も出てきます。それは奄美自体がそのおかげで苦労してきた中心主義的な視線の孫引きにつながらないとも限りません。それにそれ以上に、個々のシマ/島こそは主役であるという奄美的態度に似つかわしくありません。そうですよね。

 このことは奄美の受けた困難への屈服と屈折と抵抗の物語の多くが奄美大島にあることを別にしても言えることです。それらの経験の規模の大きさ自体には、与論島生まれのぼくは敬意を表したい思いにかられます。

 たとえば汾陽光遠は『租税問答』のなかで、「就中大島の四斗五升代は其祖甚重し、島民何の罪あるや」と書くのですが、とりわけ大島の租税は重いというときの「大島」とは奄美大島のことを指しています。というのも、汾陽は、「外の島」は、おおよそ「皆一斗代」であるのと比べて、「大島」の島民に何の罪があるのか、とそう言っているのです。これは「米納」ことで換糖上納制の前のことですから、米の年貢の時代から大島は重税を課せられていたのです。これだけでも大島の担った負荷は相当なものだったことが分かりますが、ぼくたちはそうした事実から大島への敬意を感じます。このことひとつ採っても語るべき多くのことを大島は持っています。ぼくにしても、二重の疎外の構造化の由来を尋ねるのに、その要点は大島での出来事を踏まえることで見えてくると考えてきました。

 ただ、ここで言いたいのは、語るべき多くのことを大島は持っている。それは奄美史の大きな幹をなすことは疑いようもないことですが、それとは全く別に、ひとつひとつの島は語るに値する。そのことを言いたいのです。


「奄美自立論」38

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