« 黒糖の硬さと甘さは珊瑚が決め手 1 | トップページ | 奄美大島の大画像 »

2008/10/29

黒糖の硬さと甘さは珊瑚が決め手 2

 島に行けば、琉球弧の普遍的風景のように、今も砂糖きび畑は目の前に広がっています。だから、きびの植え付けから収穫までは身近に感じることができます。けれど、砂糖きびから黒糖をつくる製糖の過程は、機械化され工場で行われるので、島人が黒糖をどのように作ったのか、もう少し接近してみます。

 まず、黒糖を出荷するのに砂糖樽を作らなければなりません。さきほどの想定では、一二個の樽を用意する必要があります。それには、樽の胴部のクレ木と蓋と底になるシシロ、樽を締め付けるタガになる真竹を切りだしてきます。クレ木は山から採れるので、山のない喜界島は大島から、与論島は山原(沖縄島)から取り寄せたといいます。そして技術者に依頼して樽結いをして砂糖樽をつくります。また、船積みしたときの荷痛みを防ぐためだと思われますが、砂糖樽の上部に被せるわら製の蓋であるシフタと、シフタをかぶせた後の樽を縛り上げる網も作ります。黒糖はきび汁を煮詰めてできるので、多量の薪を用意します。

 収穫した砂糖きびは、車場(クンマンド)で圧搾します。曳き棒を牛馬に引かせて三基のクンマ(圧搾車)を回転させ、車の間に砂糖きびを差し込み圧搾します。圧搾したきび汁を砂糖炊きしますが、それは砂糖小屋(サタヤドリ)で行います。砂糖小屋(サタヤドリ)の中央の砂糖炊き窯できび汁を煮詰めるのです。

 この炊きあげのなかで、砂糖の甘さと硬さが決まるのですが、そこに使われるのが、珊瑚なのです。硬さと甘さを決めるのに必要なのは石灰ですが、石灰が市販される前のこの時期、石灰は珊瑚を使っていたのでした。枝珊瑚を竹かご二杯分ほど採り、焼窯で焼き、珊瑚(ウル)を真っ白な石灰にするのです。

 『黒糖悲歌の奄美』によれば、「石灰が多すぎると極端に硬く、にがい砂糖となり、少なければ糖汁は固まりません」ので、このウルを入れる量は、料理の調味料のように、黒糖の出来を大きく左右したはずです。島人はここで繊細にウルを入れていったに違いありません。黒糖といえば、亜熱帯の陸の産物ともっぱら思われていますが、そこに、その質を左右する大切な要素として、珊瑚という海の幸が埋め込まれているのを知り、なお一層、黒糖は琉球弧らしい産物だと分かってきます。今、珊瑚が消滅の危機にありますが、黒糖とは、豊かな亜熱帯自然の賜物に他なりませんでした。


「奄美自立論」 12-2

|

« 黒糖の硬さと甘さは珊瑚が決め手 1 | トップページ | 奄美大島の大画像 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 黒糖の硬さと甘さは珊瑚が決め手 2:

« 黒糖の硬さと甘さは珊瑚が決め手 1 | トップページ | 奄美大島の大画像 »