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2008/08/10

原告、アマミノクロウサギ

 日本初の奄美「自然の権利」訴訟

 環境ネットワーク奄美は、1995年、鹿児島県知事を相手に奄美「自然の権利」訴訟を起こしている。その際の原告は、なんと、「マミノクロウサギ、オオトラツグミ、アマミヤマシギ、ルリカケス」だった。
 動物たちを原告にしたのは、「長老」のため息まじりのつぶやきだったという。

「カシガレィ イゥンクトウ キカンパ トウリニディン ウッタエラソヤ(こんなにまで言う事を聞かないなら鳥にでも訴えさせようか」と。みんな思わず笑ったが、長老の発言は単なるジョークではなかった。「人間は自然に生かされている」という先人たちの自然観に根ざした奥の深い発言だった。みんな本気で考えた。それでも決断するまでには三年近くの時間がかかった。

 悩む甲斐のある三年間だったと思う。ぼくは、この訴訟はとても奄美らしい、奄美的なやり方だったと思う。原告が「マミノクロウサギ、オオトラツグミ、アマミヤマシギ、ルリカケス」なのは、近代法の何たるかを無視しているが、奄美らしさの何たるかに応えている。それは、ここに、人間と動物とは等価な存在であり、人間は動物とも話ができるということが、奄美の身体に眠る記憶を呼び覚ますのだ。

 訴訟は、裁判所からの動物の背後には人間がいるはずだ、住所氏名を明らかにせよ、との補正命令を受け、「アマミノクロウサギこと00」と訂正して受理された。

 この間、原告団が主張した基本姿勢は原告弁護団団長が「この裁判は国際的な関心を集めている。野生生物とその生息地を確保することについては、法と正義を実現していくべき裁判所も無関心、無関係の立場をとることはできない。本件訴訟は原告、被告、そして裁判所による共同作業にょって、名実ともに裳の自然保護の前進に向けたよりよい方向と結論を探っていく作業である」と述べた。原告団はアマミヤマシギを代弁して「私たちは人間のじゃまをしません。ですから私たちを殺さないでください」、「環境ネットワーク奄美の願いはただ;、すべての生き物たちがにぎわう健康な環境の中で、ヒトと自然が、人間と人間が共に生きる社会の実現です。その中に奄美の個性を位置づけているのです。環境を守る運動はこれからが正念場です。この訴訟の結果いかんにかかわらず歩み続けなくてはなりません」と訴えた。『奄美戦後史―揺れる奄美、変容の諸相』

 判決は「これまでに立法や判例等の考え方に従い、原告らに原告適格を認めることはできない」と、資格がないので却下というものだったが、判決には原告の主張が相当に反映され、当初の期待をはるかに上回るものだったため、上告しなことにしたという。

 ぼくは、この自然の権利訴訟は、奄美の思想のオリジナリティが宿った底力があると思う。この発想ができるということが、奄美の力ではないだろうか。


「復帰後の奄美の変容-『宝の島』・『捨てられた島』が『利権の島』に-」薗博明
『奄美戦後史]31


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