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2008/06/07

「知られざる奄美諸島の歴史」

 琉球弧地域をめぐる従前の歴史学研究は、琉球王国論に収斂される潮流が強く、奄美諸島や先島諸島は独立国家が育んだ社会文化の地方展開を知るための補助資料として対象化されてきた。そうした沖縄本島中心史観とでも言うべき歴史理解は、国家誕生以前から沖縄本島が歴史舞台の主役で在り続けてきたような錯覚さえ生み出しはじめている。沖縄側における考古学や歴史学の専門家たちが、そうした視点で奄美諸島と先島諸島を見ている限り、当該地域で発見的考古学や発見的歴史学を進めることは難しいであろう(もちろん考古学的発見や歴史学的発見はあるだろうが)。

 奄美諸島の歴史を顧みれば、琉球王国統治、薩摩藩統治、アメリカ軍政府統治など、外部から統治される歴史が繰り返されてきた。しかし、奄美諸島が利益を生み出す地域であるからこそ、利権獲得のために統治されていたという側面を認識するべきである。屈辱の歴史へ冷静に対峙して、検証を重ねる作業の中から、奄美諸島を振興発展させる本質的課題が見出だせるのではないか。

 来るべき新世紀は、琉球王国論が終焉をむかえる時である。新しい琉球史は、奄美諸島と先島諸島から記述されるであろう。奄美諸島の逆襲がいよいよはじまる。(『それぞれの奄美論・50』

 「すみやかに沖縄の逆襲が行われんことを」。

 たしかこれはりんけんバンドが、80年代に使ったキャッチコピーだ。ぼくは胸のすく思いでこのコピーを見た。逆襲の相手は、日本あるいは大和だったろう。このときの沖縄文化の奔流をぼくも楽しんだ。琉球弧の一人としての孤独感が解放されるようだった。ただ、そんな中で、沖縄の文化が琉球王国を根拠にするとき、とてもがっかりした。『琉球の風』の描かれ方にしても同じだった。琉球の誇るべきは琉球王国ではない。そんな想いだった。

 沖縄本島中心史観としての琉球王国論は終焉したほうがいい。そこに奄美諸島の逆襲が欠かせないのは、八重山の逆襲が欠かせないのと同じだと思う。

 「奄美諸島の逆襲」。これは気持ちのいいフレーズだ。ぼくは思想としての薩摩への「奄美諸島の逆襲」が行われるべきだと考えている。


「知られざる奄美諸島の歴史」高梨修


 

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