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2008/06/12

「南島の文学」

 島尾敏雄の加計呂麻島を舞台にした小説に「島の果て」がある。
  トエは薔薇の中に住んでいたと言ってもよかったのです。(略)ここカゲロウ島では薔薇の花が年がら年中咲きました。
 と始まる、幻想的で美しい物語というスタイルである。

 この箇所の幻想と美は、「薔薇」が覆うイメージの他に、加計呂麻島を「カゲロウ島」と表現したことで強化されている。見ようと思えば、加計呂麻島のはかなさだけでなく、奄美のはかなさも二重に映し出されている。

 浦田さんはここから、「南島の自然」、「生活と歌の調和」、「生活苦」、「激情の歴史」、「苦い自嘲」などの南島の文学のテーマを辿っている。

 それに南島の亜熱帯性気候は四季の移り変わりもそれほどはっきりと区別がつきません。水稲も二期作で、正月に童の花や朝顔の花が咲いたりします。ただ真夏の容赦のない厳しさだけが、年の経巡りを夏毎にはっきりと思い知らせてくれます。しかしまた夏の夜は海の方から小止みなく潮風が吹き、空気が冴えて、月夜にはその光fで島全体がふかい青色につつまれ、星もあかるく輝きを増してくるので、人々は月の浜辺にさまよい出たり、星空を仰ぐことが多くなり、人間と自然がひとつに溶けあえる季節でもあります。(『海辺の生と死』

 ぼくはそれに加えて、ここにある「人間と自然がひとつに溶けあえる」ことも南島の文学の源泉ではないかと思っている。そんな文学の登場を期待したい。

「南島の文学」浦田義和



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