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2008/06/24

「復帰運動の語り継ぎ及び奄振のあり方」

 現在の「奄美を問う」ためには、以上のような歴史をふまえたうえで、米軍政下での民族運動としての「親米的」島ぐるみの復帰運動を起点にして、考えを構築することが大切である。この連載の五月二十四日付けでロバート・D・エルドリッヂさんが指摘するように、復帰運動が「奄美群島の早期返還」の決定的な要因の一つであったことを、私たちは今一度認識しておかなければならない。さらに奄美大島日本復帰協議会(復協)議長・泉芳朗というヒューマニスティックな指導者のもとで、群島民が心を一つにして「日本復帰」を闘いとった運動を奄美歴史上の金字塔として、私たちはこれを最大限に評価し、語り継いでいくことが大切である。(『それぞれの奄美論・50』

 ぼくは、いま大切なのは復帰運動を「最大限に評価」することではなく、「充分に内省」することではないか。貧困や孤立感から復帰に雪崩れ込んだのはやむを得なかったとしても、「群島民が心を一つ」にしたことが、本当に主体的な意思だったのかどうか、「心を一つ」にしたこと以上に、「心」の中身を吟味するのだ。そのほうが、奄美にとって得られるものはずっと豊かだと思う。

 ところで二十一世紀は、奄美群島にとって経済的な自立(自律)が課題になる。直接占領の償いとして始まった補助金政策「奄振事業」は、二〇〇三年(平成十五年)度で五十年を迎える。五年の時限立法である特別措置法が改正を繰り返し、奄美群島十四市町村へ一兆五千億円を超える多額の投資がなされることになる。現在では社会資本(道路・港・空港など)が整備され、農業振興の一環として農業基盤整備も充実してきている。しかし、数字計測の「所得水準」のモノサシでは、本土との格差は依然として続いている。今後はこの現状を「格差是正」として単眼的に捉えることなく、自然を含めた資源の豊かさ・奄美文化の豊かさ・生活習慣の豊かさ・地域共同体の豊かさなどを総合的に捉える複眼的思考が大切である。そして、これらの「豊かさ」を活用する起業家を育てる奄振事業が必要になってくる。そのためには十四市町村がこれまでの「上意下達」から「分権と参加」の住民主体の自治体へと意識を転換することである。地域政策の主体は地域住民であるからだ。

 奄振は延長が満場一致で可決されたという。「NPO法人ゆいまーる琉球の自治」の松島さんは、「開発行政によっては島は自立しない」(「奄振の延長が満場一致で決議された」)と問題提起している。「奄美の家日記」の圓山さんは、「ハード面だけでなく、是非ソフト面にも」と提案している。奄振の予算は300億くらいだろうか。奄美の人口は約15万人(正確な数値ではありません)だとしたら、2万円/人ということだ。いっそこの2万円を一人ひとりに提供。その使い方は島人みんなで決めるとしてはどうだろうか。しかしその前に、「奄美群島振興開発特別措置法」の主体がなぜ「県」なのかが分からない。奄美はこの主体を「県」から取り戻してはどうだろうか。


「復帰運動の語り継ぎ及び奄振のあり方」西村富明


 

 

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