« 『めがね』がザルツゲーバー賞 | トップページ | アマン »

2008/02/18

沖永良部学の伊波普猷賞

 去年、「沖永良部島民のアイデンティティと境界性」という論文が公開されているのに気づいて、「沖永良部学との対話」を楽しませてもらった。

 それまで琉球弧を考察する論文といえばほとんど沖縄発のものだった。沖縄発の琉球弧論といえば、与論や奄美のことは範囲として中に入れられているが、実質として外されているといった実感が強かった。だから、奄美発の琉球弧論というだけで、嬉しかった。「沖永良部島民のアイデンティティと境界性」は、その奄美発の問題意識の延長にあるものだが、それともちょっと違っていた。それは、なんといっても沖永良部発、だったのだ。

 それはお隣の、兄弟島からの発信で俄然、親近感が湧いた。そして驚いたことに、実際に読んでみると、問題意識も近接しているのに気づいた。ぼくはそこでポスト・コロニアルという言葉を教わりながら、自分のアイデンティティが、まるで消去法の果ての残余のものでしかない現れ方をすることや、どれかひとつと言い切れないもどかしさに言葉を届かせた論考に初めて出会って胸躍らせた。

 たぶん、それが「沖永良部島民のアイデンティティと境界性」へのぼくの感想だった。

 前置きが長くなったけれど、この度、「沖永良部島民のアイデンティティと境界性」をもとに書籍化した、高橋孝代さんの『境界性の人類学』が、伊波普猷賞を受賞した。

 それは嬉しい知らせだった。元ちとせや中孝介がデビューしたというのと同じような嬉しさだ。奄美の、自己表現が胎動している。なんかそんな気がしてくる。実をいえば、伊波普猷賞の何たるかを、ぼくは全く知らないのだけれど、いいじゃないすか、嬉しいじゃないですか。

 授賞式は那覇で行われている。駆けつけたくもあったけれど、東京からだと、ちと遠い。この場を借りて、おめでとうございます、と言わせていただきます。

 ※那覇で伊波普猷賞贈呈式・祝賀会



|

« 『めがね』がザルツゲーバー賞 | トップページ | アマン »

コメント

はじめまして。
沖永良部を調べていてここにたどり着きました。
「沖永良部学の対話」カテゴリの記事を全て拝見し、
感動しました。

私は神戸出身なのですが、私の祖父母は父方も母方も
沖永良部島出身です。

祖父母たちはあまり自分の過去を話したがらず、
祖父母たちが沖永良部出身だと言う事も、子供の頃に
母からサラっと聞いただけでした。

母も沖永良部には行ったことがなく、どこにあるのかも
知りません。私も当時はそれほど関心がなく、
沖縄周辺の島かな?程度の認識でした。

数年前に沖縄を旅行した際、人の顔の作りに自分との
共通点を感じて「ここが私のルーツなんだ!!」と
激しく感動しました。

そして最近になって、沖永良部の歴史を調べ始めました。
しかし、その情報量の少ない事・・・。

このサイトに出会って、やっと島の歴史の輪郭が
見えてきました。

これからも沖永良部や奄美の歴史を調べていこうと思います。
私の中に流れる血が、どんな歴史を歩んできたのか、
自分は何者なのか、やはり気になります。

ご先祖様からのメッセージを受け取りたいと思います。

投稿: ロレン | 2008/02/19 14:56

ロレン様

ルーツ探索、ご一緒しましょう。
私は島の出身者ですが、島のことをよく知らないのは同じです。
自分がうかつだからでもありますが、島のことが語られてきていないからでもあります。

祖父母様の気持ちが分かるように思います。といいますか、私の周りでもそういう方は珍しくありません。私の祖父は、私が島出身者だということを自己紹介のとき強調するのを不思議がっていましたっけ。

与論では沖永良部島を兄弟島と呼んでいますが、与論に比べても比べなくても、沖永良部の方は勤勉で成し遂げる力があるという印象があります。

これからどうぞよろしくお願いします。

投稿: 喜山 | 2008/02/19 19:01

昔は奄美・沖縄出身者は出身地を隠す事も多かったと聞きます。

私も親父からは「さっさと日本人と血を混ぜろ」なんて言われますし、上京前に大学の教授から「島人である事は人に言うな」と釘を刺されました。

でも、時代が変わりつつあるんだなと思います。

投稿: 琉邦 | 2008/08/30 11:54

琉邦さん

コメントありがとうございます。
いまでも、島人であることを隠すのがアドバイスでありうるなんて驚きです。

でも、おっしゃる通り、時代は変わりつつあると感じます。

投稿: 喜山 | 2008/09/01 09:15

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87956/40171813

この記事へのトラックバック一覧です: 沖永良部学の伊波普猷賞:

« 『めがね』がザルツゲーバー賞 | トップページ | アマン »