« 神アシャギの建築形態の原型は何か | トップページ | 冬の東京の奄美談義 »

2007/12/17

神アシャギとしての祭祀場の原型

 池浩三は、ウンジャミ、シヌグの他に、神女継承式、ノロの葬式、加計呂麻島のウムケ、ウホリ、アラホバナ、ミニャクチ、ウチギヘイなどの祭儀で、神アシャギが登場するのを確認している。
 池の気づきによれば、神アシャギは、稲の収穫祭の祭り小屋としての性格が顕著である。

 ついで、池は、御嶽(ウタキ)、村落、根所との関係に触れ、神アシャギは、根所の庭を発祥の場にすると仮説している。

Saishizyo
Nidukuru_2




















さて、鳥越氏の論考の第四点、神アシャゲと根所(宗家)との地理的関係は認められないとしている点についてであるが、このことは、筆者の調査結果によれば事実に反するものである。

確かに神アシャゲは、一般的には沖縄ではアサギ庭、奄美ではミャーとよばれる村落の公共的な祭りの広場に所在することが多いのであるが、沖縄・伊是名島においては、神アシャゲは各村落(仲田・諸兄・勢理客・伊是名)の根所の屋敷内にあって、建物は根所が管理しているのである。

伊是名島は琉球第二尚王統をひらいた尚円王の出生した由緒ある島であるが、その一つの島全村落にこうした現象が見られることは、やはり注意すべきであろう。

根所(または根屋)とは、沖縄の血縁的村落マキヨの草分けの家のことで、その戸主を根人とよんでいる。沖縄の古代社会において、椒人は、村落の政治的自立の過程で、その支配者となったが、彼はその姉妹である根神の霊力を借りて、祭政一致の体制を作り上げたといわれている。

たしかに、伊是名島における根所と地アサギの関係は、現時点の民俗事例としては異例であろうが、奄美におけるトネヤとアシャゲの関係をも含めて考察すると、そこには、古代血縁的村落マキョにおける根人・根神主導による神祭の基本的な祭祀場の構成を認めないわけにはいかないのではなかろうか。

神アシャゲの所在が、村落の併合発展の過程で、根所の庭から公共的な祭りの庭(神祭の広場)に移っていくことは理解できるが、その逆は社会の発展形態に矛盾するものとして説明ができないであろう。この点においても、伊是名島の事例は神アシャゲを中心とした祭祀場の原型として認めたいと思うのである。
『祭儀の空間―その民俗現象の諸相と原型』池浩三)

 池は、根所の神アシャギを原型とし、加計呂麻の広場の神アシャギが続くとしている。

 昨日、「神アシャギの建築形態の原型は何か」で書いたように、これは、逆だと思う。
 神アシャギは、まず、御獄(ウタキ)のなかの祭祀場として存在した。イザイホーで、ある時期ある属性の女性だけが、御獄(ウタキ)に入り、神アシャギに入ることが許されるように、御獄(ウタキ)も神アシャギもサンクチュアリである。正確に言えば、サンクチュアリである御獄(ウタキ)のなかに神アシャギはある。
 
 御獄(ウタキ)の終わるところから集落は始まる。そして集落が政治的共同性の色合いを持つようになれば、その首長は、御獄(ウタキ)の外縁との接点に、住居を定めるだろう。それが根人が根所につくる根屋である。根人は根所の中心性を高めるべく、御獄(ウタキ)の入口に根所を構える。そして、政治的権力の中心性を高める段階になると、根所のなかに、サンクチュアリのミニチュア、縮減模型をつくるだろう。それが、根所の神アシャギとなる。

 だから、形態としては、加計呂麻の神アシャギが先にあり、伊是名の神アシャギは、その後に来るものだ。


 ところで、根所の内部に御獄(ウタキ)のミニチュアを再現することが、どうして力を持つのか。そのことに関わると思えることを、クロード・レヴィ=ストロースは、『野生の思考』のなかで書いているという。

人はなぜ縮減化されたものを見ると喜ぶのか、と問いを立て、レヴィ=ストロースは、認識過程の逆転が快感のもとだと述べている。ふつう人間はたとえばタイタニック号のような巨大な実物大の対象を前にした場合、部分の認識からはじめ、これを綜合することで全体の認識に達する。しかし、それがミニアチュアになり、巨大だったものが手のひらに乗ると、全体の認識が真っ先に到来し、次に部分の認識がくる。その認識の逆転をもたらすのは、さまざまな要素の縮減、そして削除である。ミニアチュアではサイズが縮減される。
(「群像」4月号、「グッバイ・ゴジラ、ハロー・キティ」加藤典洋)

 ここにあるミニチュア(縮減模型)化に対する快感は、御獄(ウタキ)のミニチュアが力を持つ根拠を構成していると思える。


|

« 神アシャギの建築形態の原型は何か | トップページ | 冬の東京の奄美談義 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 神アシャギとしての祭祀場の原型:

« 神アシャギの建築形態の原型は何か | トップページ | 冬の東京の奄美談義 »