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2007/12/12

ウンジャミのなかの神アシャギ

 池浩三は、神アシャギの考察をはじめるに当たり、ウンジャミ、シヌグの例を挙げているのだが、これは与論島にもあった祭儀であり、興味を惹かれる。

 神アシャギにおける祭祀  『琉球国由来紀』には、神アシャゲにおける年中祭祀として、稲の祭り・麦の祭り・海神折目・シヌグ折目・芋折目・柴差・年浴などが記されているが、現在、沖縄地方で代表的な祭りはウンジャミ(海神)とシヌグであるから、まずこれらの神祭の模様を概観しておこう。

 事例一 沖縄のウンジャミ 
 沖縄北部の国霊地で旧暦七月の上亥の日(東海岸の安田・安波)、十七日(伊是名島・伊平屋島)、そして盆明けの亥の日(西海岸の辺土・与那・比地・謝名城・塩屋・古宇利島)にかけてウンジャミが行なわれる。

 ウンジャミは神々のふるさと・ニライカナイから来訪するニラ神(ニレー神)を迎えて、村の神女たちが神遊びをし、弓矢(または槍)で猪を射止めたり、魚捕りや船漕ぎの所作を演じて、海山の幸や村落の繁栄を祈願する予祝神事であり、その神女の神遊びによる神迎えと神送りという特徴は、沖縄の祭りの典型を示しているといわれる。

 一般にこの祭りは、(一)お寵り、(二)祭礼、(三)ナガリよりなっている。(一)はウングマイまたはウタカビ(お崇べ)ともいい、三日前の酉の日に行なわれる神人潔斎の行事である。または、ノロや神大とよばれる神女の継承式を、アラハンサ(ハミサガイ・カンサガ・神の座替などとも)といい、次の日の夜に行なう。
(二)ウンジャミ当日は、未明の満潮時にナザー(ナンザモー・ガンザとも)とよばれるニラ神の上陸地で神迎えをする。これを朝折目とよぶところもある。祭場の神アシャゲでは神を迎えて祈願があり、次いでアシャゲ庭でウムイ(オモロ)をうたいつつ的る神遊びをし、猪を退治したり、魚捕り・船漕ぎの所作事をする。終ってナザーまで神を送る。

 (三)ナガリ庭の儀式といい、山の神よりのチトウ(つと、土産)と称する山の幸の猪(冬瓜や鼠を代用)を砂中に埋めたり、儀式中に用いたハブイ(蔓草の被りもの)を海に流す。
  (『祭儀の空間―その民俗現象の諸相と原型』池浩三)

 ウンジャミ(海神)は、琉球弧の来迎神信仰をよく伝えるものだ。

 ぼくがよく分からないのは、「ニライカナイから来訪するニラ神(ニレー神)」の信仰は、稲作農耕以降のものだと思えるが、ウンジャミ(神海)の祈願の対象は、「弓矢(または槍)で猪を射止めたり、魚捕りや船漕ぎの所作を演じて」というように、「海山の幸」が農耕以前であることだ。

 逆に言ってもいい。
 素朴に考えれば、ウンジャミ(海神)信仰は、稲作農耕以前のものだが、ウンジャミで来迎する神名は、稲作農耕以降のものであるのが不思議だ。

 たとえば、与論でもかつて行われていたウンジャミ(海神)は、チャドゥマイという島の南端の岬から南方へ向かって祈る。これをみると、ウンジャミ(海神)が措定している来迎の方角は南を指しているように見えるが、これは、琉球弧全体からみれば、普遍的ではなく、他の方角もありうるだろう。

 そこでぼくは漠然と、もともとあった陸と海の狩猟の祭儀を、ニライ・カナイ信仰のもとに、稲作農耕以降の勢力が共同宗教化したのではないかと想定している。そして、神アシャギも、稲作農耕以前から存在した祭祀場であると考えている。



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