自己問答への接近 2007
大晦日。ブログを見る人も少ないだろうから、自己問答的に書かせてもらおう。
ぼくは、琉球弧の基層と上層(歴史の始まりと現在・未来)、言い換えれば、東京と与論を一緒に捉える視点を考えてきた。それを、今年、マルクスの自然哲学を拡張し、「超・自然哲学」として展開することができた。とてもつたないが、いまも時間を見てはゆっくり更新を続けている。
ところが、これを書いたことで、与論とは関係がないというお叱りも受けた。
ぼくにとっては同じことなのだが、そう言われる理由もうなずけた。いくつもブログを立てることに億劫さがつきまとったが、これを機に、受け皿が必要だと思い、「超・自然哲学」というブログにした。これは好都合だった面もある。
ぼくは、与論、ビートルズ、批評、マーケティングが、ライフワークだといつの頃からか自覚してきた。でも、ビートルズをどうすることがライフワークなのか、マーケティングとひと口に言ってもひろうござんす、一体何をすることがライフワークなのか、そんなことは見当がつかなかった。
7年前、ジョン・レノンとポール・マッカートニーの作品を通じた相聞歌が、ぼくの視点だと気づいて、「ビートルズ相聞歌」をメールマガジンで書き始めた。与論は、与論でしか味わえないあの感じを言葉にしたいというのがぼくのモチーフだったが、脳科学者の茂木健一郎の言う“クオリア”という概念がピッタリだと思って、「与論島(よろんじま)クオリア」とした。そして、批評のテーマが、「超・自然哲学」だ。仕事のことはいちばん後になるらしく、マーケティングは「生の声マーケティング」にひとまず落ち着いた。
もちろん、ブログを書くことはライフワークそのものではない。特に、与論のことは、実際の与論島が元気にならなければ意味がない。ただ、なすべきことの視座がつかめたことは今年の収穫だった。なにしろ、たったこれだけのことに、人生の半分以上を費やしてしまっている。
◇◆◇
「手紙を書こうと思ってるよ」と話し、「ぼくもそう思ってるよ」と答えてもらったのが、父との最後の会話になった。前の晩だった。心残りだというのではない。手紙は書かなくても互いの伝えたいことは分かっていたと思う。それより、手紙を書こうと思っている、そのことを伝え合えたことが今となっては慰みなのだ。
父は旅立つ少し前の四月、ぼくを励まそうと、「タンポポの詩」を教えてくれた。
父は、この詩を生徒に読んで聞かせることもあったというが、その前に自分自身のために読んでいたに違いない。生涯、一介の小学校教師を通した父をぼくは尊敬し、同時に、かばうべき人と感じてきた。
ぼくはいつも徒手空拳でいようとしてきたが、それは父を継ごうとしてきたのだと思う。
これからもぼくは父をかばおうとするだろう。けれど、もういいよという父の声がする気がする。ぼくも少しは現世的に生きていっていいような気がしている。
◇◆◇
今年は、生涯のなかで、もっとも辛い一年だった。
恐怖に震え、膝を折り、のたうちまわり、しこたま泣いた。愚かしいことに、ぼくはそれが峠を越えつつあるのか、まだ始まったばかりなのかすら分からないでいる。ただ、まだ倒れるわけにいかない。
そんな時間の流れのなか、与論は全力でぶつかっても、いつも尽きない新しい表情を見せてくれた。昔から与論は駆け込み寺であり続けてきたが、それは健全で、ぼくはまたしても助けられたのだった。今年は、与論だけでなく、奄美や琉球弧まで、精神を委ねる対象は広がっていった。そのなかで、このブログを通じて、知り合い、出会い、再会した人たちに心底、助けられた。それぞれがかけがえのない出会いで、救われる想いだった。
何だか本のあとがきみたいだが、実のところ、来年は、「与論島クオリア」の更新頻度を落とそうと思う。身過ぎ世過ぎ、「生の声マーケティング」に傾注せねばならんとです。
なに、頻度を落とすといっても、関心が絶えるわけではない。それはありえない。三十数年間、島ホームシック(あんとに庵さん命名)であり続けてきたのだ。関心は、いつも絶えずあり続ける。それに、少し間を置いたとしても、与論はいつでも待っていてくれる。そう感じられるようになったのは今年の収穫だ。ゆっくりとではあっても、与論の考察は進めてゆこう。むしろ、与論を元気にする活動は、実際的な場面で行っていきたい。
来年、与論の人、与論に想いを寄せる人が幸多いことを祈ります。奄美・琉球弧の方々においてもまた。
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コメント
暮れはわびしくても、忘れたいことも思い出したいことも
明日は太陽に向っていく たんぽぽの姿
父を超えたくても
それは無理だと自分に言い聞かせているが
物言わぬ母や
農作業に自信があった父がみられなくなったら辛い。
孝行をしたいが、
孝行の意味が理解できない。
クオリア の概念には共感できる。
来年も よろしく。
今日 寺崎海岸の細かい砂で庭を清めました。
新しい いい年を迎えましょう。
投稿: awamorikubo | 2007/12/31 21:01
awamorikuboさん。
ああ、寺崎でしたか。
ぼくも昔、フバマの砂で清めたのを思い出しました。
今年、本当にお世話になりました。
来年もよろしくお願いします。
投稿: 喜山 | 2007/12/31 22:50