砂浜をめぐる
「なんでそんなことするのかさっぱりわからんちょー」
と、パラジ(親戚)のアンニャー(姉)に言われて苦笑したものの、
今回、やりたかったのは、与論の砂浜めぐりだった。
もっと言えば、与論島の全砂浜を写真に収めようと思った。
仮にも、ぼくは「砂の島」と、「ゆんぬ」の地名を解している者だ。
自分の足で、“砂の島”としての与論島の感触を
つかみたいと思ったのだ。
思えば、与論に何度も帰ってきているとはいえ、
ぼくにとって与論滞在とは、
宇和寺でパーパー(祖母)と過ごし、
フバマに泳ぎにいくことだった。
子どもを連れてくるようになってもそれは変わらない。
むしろ、フバマから上がって少し休むと、
すぐに、「お父さん海行こう」とせがまれるので、
フバマへの頻度は高くなったくらいだった。
ぼくはそれでよかった。
それ以上にやりたいこととてなかったから。
宇和寺と祖母とフバマ。
祖母の生前、ぼくのいう与論とは、
畢竟、この三つのことだったかもしれない。
そのせいで、与論が好きで何度も帰っている割には、
与論を知らないのだった。
それに、言葉を手がかりに地名を探りながら、
フィールドワークをしていない(できない)後ろめたさは
いつも感じているので、砂浜めぐりは、
しなくては、という思いがあった。
○ ○ ○
旅の人に、南国モータースを紹介したついでに、
自分もそこで自転車を借りた。
それを足に、ぼくは一周道路ではなく、
もっと海辺の通りを走った。
巡っての実感は、東西南北(あがりいーぺーみし)、
どこも、砂浜だらけだった。
隆起珊瑚礁は、その裾野に砂浜を置いて、
海とのクッションをつくり、
島を穏かに包んでいるようだった。
さすが珊瑚の島だ。
行程は純粋に砂浜めぐりに終始したわけではない。
朝、出発して、もう幾時間も経たないうちに、
ある浜辺で、漁師さんにとれたての魚をいただき、
腐らせないようにと、一端、戻って冷蔵庫に入れて、
一休みして、また出かけるという嬉しい道草もあった。
ただ、時間の勘定をしていなかったので、
午後の、陽射しがいちばん強い時間に、
島の南の、砂浜少なく勾配急な道を走ることになった。
岩陰があると思い、少し休もうと近づくと、
うすうす思っていた通り、風葬の跡。
のんびりするわけにもいかないと、
そこから目の前にある急な坂を砂浜目指して下ると、
そこは、与論では珍しい巨石が並ぶ岩場だった。
人を寄せ付けないその風景は、
他界としてのニライカナイ、「根の堅州国」を思わせた。
けれど、ぼくもまいっていた。
わずかばかりの木陰に、腰をおろして、
荒い息が収まるのを待とうとした。
ああ、これが進むといわゆる熱中症になるのかなと
漠然と思っていたが、場所が場所、
坂の上には風葬跡が見え、
すぐ下には、他界への入り口が口を開けているようで、
長居はいけないと感じていた。
けれど、身体は動かない。
はーはー、と息を切らしていると、
ちょうどそこへ携帯にCメールが入る。
学校があるからと先に帰した子どもから、
「お父さんのメールアドレス教えて」。
他愛ないもので、
ぼくはそのひとことで力が湧きあがってきて、
腰をあげ自転車を再び漕ぎ出すことができた。
今思えば、あれはちょっとした危険な状態で、
ぼくは子どもに助けられた気がしている。
○ ○ ○
充電切れには万全を期して?
充電池をもう一個、用意していたのに、
自転車で走ればついつい、
花や七離れや辺戸や沖永良部を写したくなるもの。
予定外に枚数を重ね、
想定外にSDカードを切らしてしまった。
で、一日では完遂に至らず、
二日をかけて巡ることになった。
極度の方向音痴の本領を発揮して、
また、海に向かう小道を見つけては入り、
途中、農道の終わりを確認して戻ることも繰り返したので、
おかげで、与論が小さなアップダウンの多い、
坂の島であることも体感した。
ヨロンマラソンのきつさも少し分かった。
でもなにより、足はパンパンに腫れたけれど、
砂の島としての与論島を実感することができた。
○ ○ ○
名を知らない浜も多くあり、
強烈な陽射しの中、見落としている小さな砂浜も
きっとあるだろうけれど、
与論の砂浜を見てきました。
画像データを整理しながら、
その成果を少しずつ、披露していくつもりです。
(長文、ごめんなさい)
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コメント
先日は有り難うございました。
砂浜巡りは愉しいですよね。私も大潮の時は浜づたいに延々歩きます。繋がっている限りは歩けるので、うどのす〜宇勝辺りは浜づたいで行けますよね
。
フバマはどの辺りですか?(よく知ってるとこかも)
浜のお写真。ぜひ解説尽きで見たいです。知っているトコ、未だ知らないトコ色々ありそうです。島は小さいようで実は広いので未知なるところはまだまだありそうで愉しみです。
投稿: あんとに庵 | 2007/09/07 21:00
あんとに庵さん
フバマ、よくご存知ではないかなと思います。
ウドゥヌスーの北隣りの小さな入り江です。
コーラルホテルの前、といえばいいでしょうか。
いまコーラルホテルのプライベートビーチっぽくなっていますが、
あそこはそうではなく、フバマといいます。
ぼくはいつもホテルのなかった頃、
珊瑚岩とアダンやはまゆうで覆われていたフバマを幻視しながら、
浜辺にいます。だから、撮る写真にホテルが入ったことがない。(^^;)
でも今回は、ホテルの設備は使わせてもらいました。
そういえば、ぼくの撮った一枚は、
あんとに庵さんがブログに載せている写真と似てるなあと思っていました。
投稿: 喜山 | 2007/09/08 11:05