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2007/09/20

ウプドーナタ - 大道那太

  そして力持ちのナタは大工もやれば魚とりも名人である。
  そして夜の海、昼の海、魚は思うようにいくらでも取っていらっしゃる。
  舟も自分で作る何もするお方であった。
  王様からもらった山林より材木も切り倒して一人で運び舟を作る、
  木も運び倉を作る、皆々一人で運んでいらっしゃったのだ。
  現在立っている家や倉もウプドオーナタの神様が
  沖縄から一人で切り倒して運び造られたヤークラだ。
  八百年前に建てられた家や倉だが今から
  千年経っても万年経ってもグットゥンシランヌ家だ、
  そんな立派な材木で造られた家や倉だ。
  君たちも一度は是非拝見するのだ。
  その時はまずウプドオーナタの神様に礼拝を先にする
  そしてウプドオーナタの神様から二十三代目にあたる
  ムラプ叔父さんがいらっしゃる、叔父さんの子や孫さん達もおられる、
  その方々からいろんなお話も聞くのだ。
  (『無学日記』池田福重)

ぼくはここで、ウプドーナタの物語を紹介したいわけではない。
与論の英雄時代の豪傑の一人、ウプドーナタの物語を池田さんは
紹介するのだが、最初、ぼくたちは民話を読んでいるつもりで、
それこそお話に聞き入っている。

ところが、現在建っている家や倉もウプドーナタが作ったものだという
ことを言われて、民話が現実に接点を持つのに、少し驚く。
それだけでなく、子孫の人たちの話をよく聞きなさいと池田さんが言うに及んで
今の与論の人と地続きの話だということになってまた驚くのだ。

ぼくは、ウプドーナタは架空の存在であると言いたいわけではない。
『無学日記』を読んでいると、池田さんの人生回想のはずなのに、
まるで民話を読んでいるような感覚に囚われていく。
池田さんは、海霊イシャトゥと一緒に、民話の主要な登場人物なのだ。

夢か現か分からないところで書く池田さんの筆致は、
『無学日記』を貴重な与論民譚にしているのだが、
この、ウプドーナタの話を池田さんを頼りに読んでいくと、
民話の登場人物は池田さんだけではない、
ウプドーナタの建てた家倉を見物したり子孫の話を聞いたりすることも
できるという可能性を受け容れていくと、
いつの間にか、ぼくたちも民話の世界の中に入っているような気がしてくる。

ぼくたちもまた、『無学日記』の民話の住人なのだ。


  ※ウプドーナタ(大道那太)の物語



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