津堅地名考7 津堅=久高
さて、「グディキン(gudikin)」を起点に、
津堅島の「チキン」の由来を考えてきたが、
ここで、「チキン」にヒントを与えてくれた「ウティキン」の
文章を思い出そう。
琉球の地図として最も古い『海東諸国記』(一四七一年)
所載の「琉球国之図」に本島の東海上に「通見島」、
「有見島」が見えているが、「有見島」が現在の久高島
に間違いない。どう読めるのか久高島とは差が大きすぎる。
しかし久高島の西海岸にウティキンの地名があり、
ウティキン→ウキンと読める。古くは有見島と作られた。
(『地名を歩く』新垣源勇)
これに助けを借りれば、
通見島 - チキン - 津堅島
有見島 - ウキン - 久高島
と、こう見なしている。
ところでぼくたちは、「チキン」も「ウキン」も
同じ「グディキン」から派生した言葉だと見なした。
「チキン」と「ウキン」は同じである。
ということはつまり、
津堅島と久高島は地名として等価だということになる。
津堅島と久高島は、その古名の語源が同じなのだ。
○ ○ ○
津堅と久高と 船橋かけて
津堅のみやらび わたちみさぶ
津堅島と久高島に橋をかけて、
津堅の乙女を久高に渡してあげたい、という、
これは両島の親密感を示した詩である。
この詩が示すように、二つの島は、男性と女性というような、
対なる関係とみなされてきた。
ぼくたちは、この寄り添っているということに、
地名として等価だという意味を加えることができる。
沖縄島から、二つの島を眺めたとき、
同じような形の島が対にあるように見えるに違いない。
そして二つとも同じ意味の地名がつけられた。
両者は、互いを区別するように違う音に落ち着くが、
やがて漢字が当てられる頃には、
語源が同じということは忘れられていたに違いない。
けれど、無意識のうちには、
地名を同じくしたことを互いの親近感のうちに
確認しあってきたのだと思える。
ぼくたちはここで、西表島の沖合いに浮かぶ、
波照間島と鳩間島が、同じ「沖の島」の意味ながら、
音を変えていった例を思い出す。
後世の人は地名の字面にロマンを見つけたがるのだけれど、
実は、地名の変遷のなかにロマンは宿っている。
これはそんな例かもしれない。
※「津堅地名考1 チキンとは何か」
「津堅地名考2 手がかりとしてのウティキン」
「津堅地名考3 キンは山」
「津堅地名考4 グシは崖」
「津堅地名考5 グディキン(gudikin)」
「津堅地名考6 グディは『崖』か」
「津堅地名考8 久高島の由来」
「津堅地名考9 『グスク』の可能性」
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