ダークラ転移考
以前、シニグ祭の祭舎であるサークラについて、
サークラよりザークラ、ザークラよりダークラが古形であると捉え、
かつ、サークラの意味を「酒倉」ではないと仮説した。
これについて、補強と修正を行いたい。
サークラ、ザークラ、ダークラと発音が並存しているが、
それぞれの古さの順序は、
ダークラ、ザークラ、サークラであると捉えるのは変わらない。
改めて、その根拠を示しておきたい。
ダークラ(da:kula)
↓五母音化
ザークラ(za:kula)
↓清音化
サークラ(sa:kula)
麦屋で呼んでいるダークラが最も古形であり、
もっとも一般的になっているサークラは
いちばん新しい表音であると考えられる。
ぼくは以前は、仮にも男神シニレクを語源にもつ祭儀において、
サークラを「酒倉」と捉えるのは軽すぎるとみなした。
けれど、これは、酒盛りから今の与論献俸を連想したための誤解で、
過去において、酒盛りが神聖な意味を持ったことを思えば、
「酒倉」と解するのに無理はないと思えてきた。
当時、サッチャンさんが指摘したように、
与論で、酒盛りをダーと呼ぶことは傍証になる。
また、d音がy音に転移することからいえば、
ダークラはヤークラとなる可能性のある語である。
しかし、それがそうならずに、五母音化の「ザ」の音を採り、
清音化したということは、「家倉」(ヤークラ)の意味ではないことを
示唆しているように思う。
そこで、サークラは、山田実が指摘したように、
「酒倉」の意味ではないかというのが、今回加えたい修正だ。
(今日の記事は、「ウプドーナタ」のところで、池田さんが
家、倉を指して、「ヤークラ」と呼んでいることから、着想を得たものだ)
○ ○ ○
面白いのは、現在、サークラの声音だけが残り、
古形にさかのぼるように、ザークラ、ダークラを復元したのではなく、
小さな島の中に、サークラ、ザークラ、ダークラの声音が並存していることだ。
与論島でも古い集落であり麦屋にダークラの声音残り、
新しい集落は、サークラと清音化しているのは、
語の分布としてとても自然である。
まず、ダークラの声音を保持した麦屋には内閉性の強さが伺える。
そして、シニグ祭のなかで、ダークラからサークラまでのバリエーションが
生まれたのは、ダークラという言葉はもともとあり、
そこに稲作技術を伴った五母音の世界がやってきて、
シニグは農耕祭儀として組織化され、
そこで、ダークラも五母音化、清音化の過程を辿ったのはないか
ということだ。
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コメント
クオリアさん
酒盛りは、与論の言葉で「マルケ」と云いませんか?
多分、車座になって持ち寄ったマサムヌとかサイガマで
ムヌガッタイすることだと思います
ウタ・サンシヌは、サニクンディビキでも場を楽しく
賑わ合わせてその日の疲れを労うものかと
マルケの「マル」は「丸or○」で、「ケ」は「笥」
(食べ物を盛る器)だと考えられます
つまり、与論言葉の「マルケ」の語源は、「○笥」
ではないかと?思ったりします
因みに、さもそうであるかのように(然似)弾く
サンシヌ(三線)でも、場の賑わいにはなるでしょう サーニクンディビキ」もいいでしょう
ダーの場は、ただの酒盛りのことではないはずです
「シューヤ イダヌヤーヌ ダーゲーラ?」
ダークラの話は、マルケにはそぐわないのではないか
と、少し気にかかりました
投稿: サッチャン | 2007/09/22 21:13
サッチャンさん
マルケは知らなかったので勉強になります。
ありがとうございます。
マサムヌとサイガマでムヌガッタイ。
これ、いいフレーズですね。
ダークラ/サークラについては、
もう少し深められる気がしています。
いずれ書きたいと思っているので、またご覧いただけたら嬉しいです。
投稿: 喜山 | 2007/09/23 17:22
サッチャンさん いつもありがとうございます。
ユンヌふとぅばの楽しみ方
これからもよろしくお願いします。
ダー を持つ
座敷
マルケー をする場所
ダー で
倉 は その場所を マルケーをする場所
にするために 覆い をして
目的意識を持つ集団の
集会所と 考えたらどうでしょうか?
できれば お酒も
欲しいです。
投稿: awamorikubo | 2007/09/24 23:46