津堅地名考3 キンは山
多良間(タラマ)や来間(クルマ)、慶良間(ギルマ)などの
古形として波照間(パティルマ)を考えたのと同じように、
「ティキン」または「ウティキン」の
古形を想定することはできるだろうか。
そう考えて、波照間地名考の際、語尾の「マ」を軸に、
多良間(タラマ)や来間(クルマ)、慶良間(ギルマ)、
鳩間(パトゥマ)、加計呂麻(カキルマ)の類縁を辿ったように、
「ウティキン」の「キン」を軸に探ってみると、
次のような記述に出会う。
これまで「キン」は、アイヌ語の“山脈”をいう「キム」
に関連する訳が大方である。
金武の他に、具志堅(グシチン)、健堅(キンキン)、
宇堅(ウキン)、久手堅(クディキン)など、堅の字が
当てられ、方音で「キン」や「チン」と読む地名の地は、
全て琉球石灰岩台地に立地する。
(『地名を歩く』久手堅憲夫)
実をいえば、久手堅は、ここからアイヌ語とは異なる
自説を展開するのだけれど、ぼくたちはひとまず、
アイヌ語に止まって考えてみる。
手元の『地名アイヌ語小辞典』(知里真志保)によれば、
kim きム(「ム」は小さく表記されている-引用者注)
里または沖合に対して云う山。生活圏の一部としての山。
村の背後の生活資料獲得の場としての山。
「爺さんが山へ柴刈りに行った」などという時の「山」
の観念に当る。従ってこの kim は聳えることができない。
それが nupuri「山」との差である。
生活圏の一部であり聳えることはない「山」の意味なら、
山脈的に捉える必要もないので、南島的な景観にも合っている。
聳えていなくても、植物の茂ったところを「山」と呼ぶ
呼び方もあるくらいだ。
注目したいのは、具志堅(グシチン)、健堅(キンキン)、
宇堅(ウキン)、久手堅(クディキン)で、
「キン」が語尾にくる地名のうち、「健堅(キンキン)」以外は、
同じと見なせそうな気がする。
「宇堅(ウキン)」は、「津堅地名考 2」で見た新垣の
「ウティキン→ウキン」としての「有見島」のことを
思い出させる。
果たして、津堅(チキン)、具志堅(グシチン)、宇堅(ウキン)、
久手堅(クディキン)は、地名として等価だろうか。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント